【特集2】ライフサイクルを完結せよ 廃止措置の現場「最前線」報告
多くの原子力発電所が廃止措置を迎える中、既に廃炉工事が進んでいる発電所がある。「ふげん」と美浜発電所1、2号機―。その作業状況を報告する。

<ふげん>プルトニウム使用炉としての実績と成果 廃止措置のトップバッターとして技術継承も
新型転換炉(ATR)「ふげん」は2003年3月、運転を終了した。運転期間は約25年。この間、約219億kW時の発電を行い、MOX(混合酸化物)燃料772体を使用するなど、プルトニウム利用技術の実証で貴重な成果を残している。
ふげんは廃止措置においても、最も作業が進展している原子炉の一つである。08年に原子力安全・保安院(当時)が完了までのフルスコープの廃止措置計画を認可。作業を開始し、まず重水・ヘリウム系などの汚染の除去を17年度までに終えている(ちなみに重水は有用資源として、系統から抜き取り海外に輸出され利用されている)。
同時に原子炉周辺設備のうち、隔離冷却系・主蒸気系・空気再循環系設備などの解体・撤去を進めている。タービン設備では、復水器・湿分分離器などの解体と撤去を終えた。今後は原子炉本体の解体撤去を本格化し、33年度の終了を目標に作業に取り組んでいる。

どう効率的に進めるか 地元の協力得て技術開発
日本原子力研究開発機構(JAEA)には、前身の日本原子力研究所によるJPDR廃炉の経験・実績がある。とはいえ、発電実績のある実用規模の原子炉のトップバッターとして、試行錯誤を続けている面もある。廃止措置部の水井宏之部長は「作業を効率的に進めるのに大切なのは、プロジェクトマネジメント」と話す。
そのプロジェクトマネジメントで重要な要素となるのが、作業を安全、円滑に進めるための新技術だ。ふげんでは地元福井県の自治体、企業などと積極的に連携、研究開発を進めている。
運転時に燃料体を装荷していた圧力管などが配置される原子炉中心部は、高い放射線量を持つ。今、この圧力管などをロボットアームにより水中でレーザー切断する工法に挑んでいる。国内の原子炉では例がないこの工法は、JAEAの敷地内にある「スマートデコミッショニング技術実証拠点」で実証試験が行われている。
また除染では、金属などの粒をぶつけて放射能を含む汚れを削り取る工法を確立。これには地元企業の技術が大きな役割を果たしている。

現場で続く試行錯誤 厚さ4mの壁を貫通
いかに作業を効率的に進めるか、現場でも試行錯誤が続いている。頭を痛めたことの一つが、スペースの確保だ。限られた空間の格納容器内で設備を解体していけば、どんどん作業に必要な場所が埋まっていく。解決策は、原子炉格納容器とタービン建屋との間に貫通孔を設け、解体物をタービン建屋に運ぶことだった。コンクリートと鉄の壁は厚さ約4m。大掛かりの作業だったが、貫通したことにより作業効率は飛躍的に向上した。
水井氏は、効率化について「不要なものはやめる。大きなものは小さくする」と説明する。例えば、除熱の必要がなくなった使用済み燃料貯蔵プールでは、熱交換器による冷却をせずに貯蔵・管理する方法を申請し認可されている。またクリアランス制度の適用でも一歩先行。年間約150t規模の対象物の測定・評価を実施している。
「ふげんで得た技術やノウハウは、ここで終わりにしない」と水井氏。高速増殖原型炉「もんじゅ」の廃止措置も視野に入れ、作業をより効率的にと、作業に関わる全員が知恵を絞っている。