【目安箱/8月25日】政府がようやく原子力活用へ転換の意味

2022年8月25日

政府は8月24日、首相官邸で「GX=グリーントランスフォーメーション実行会議」を開いた。そこで岸田首相は地球温暖化防止と逼迫する電力需給に対応するために、来年の夏以降の原子力の追加の7基の再稼働と、次世代革新炉の開発・建設など「あらゆる手段をとる」と表明した。今までよりも原子力を活用する意向を述べている。

政策転換へ踏み出した岸田首相

原子炉7基の追加再稼働は既定の計画で新しい話ではない。しかし中には政治的にこじれて住民合意が遅れ、動かしづらい原子炉がある。岸田首相は「国が前面」に出て再稼働を行うことを表明した。また原子炉の新設について、岸田首相はこれまで「想定していない」と直近まで述べていた。次世代革新炉の開発・建設に言及したことは、その政策が転換したことになる。そして首相の立場からの、この発言には意味がある。

7月に岸田首相は会見で、原子力の活用を表明しながら、実質的には何も新しいことを表明せず、エネルギー関係者は失望していた。(『【目安箱/7月19日】岸田首相「覚醒」せず 原発再稼働表明のごまかし』)今から考えると、これは一種の「観測気球」で、政策を徐々に転換させる布石だったのかもしれない。各種世論調査でも、7月末の電力危機以降、原子力の再稼働を直近で進めることを求める意見が、その停止を求める意見を上回るようになっている。

◆再稼働、革新炉開発に政府が関与

政府によれば、再稼働の対象になるのは7つの原子炉という。関西電力高の1号機と2号機(福井県)、東北電力女川2号機(宮城県)、中国電力島発2号機(島根県)は、追加工事を行って再稼働を行う。

また東京電力柏崎刈羽6号機と7号機(新潟県)、日本原子力発電東海第二(茨城県)は、地元の理解を得るため国が前面に立って対応するという。柏崎刈羽では、東電社員が保安規定に違反していたことを原子力規制委員会が問題視し、再稼働が遅れている。東海第二では住民避難計画の策定が遅れている。国の関与は、このこじれた問題の解決に役立つだろう。

革新炉については、経産省・資源エネルギー庁の「革新炉ワーキンググループ」が検討を進め、2030年代に実用化する期待を示している。その計画を、政府として支援すると言うことらしい。原則40年とされる原発の運転期間の延長も、岸田首相は表明している。

◆難しい政策の具体化をどうするか?

11年3月の東京電力福島第一原発事故を受け、当時の民主党政権は原子力の低減という政策を打ち出した。12年からの自民党政権は、その扱いを曖昧にしてきた。事故から11年目で、岸田首相の表明で、ようやく国の政策が「原子力活用」に転換した。その点では意義がある表明と言える。しかし、年内に具体的な計画を出すと岸田首相は述べているだけだ。その具体化は、かなり難しい。

どのような型の原子炉を、どの企業が、どこに、どのような資金調達計画で、いつまでに作る――。これを決めるだけでも大変だ。どの電力会社も原子炉再稼働の遅れや電力自由化への対応で経営不振に直面しており、あらたに巨額の費用のかかる原子力発電所を作る余力はない。

革新炉の開発にしても、日本は1970年代から続く高速増殖炉開発プロジェクトについて、16年の「もんじゅ」廃炉で挫折した。この失敗の後始末の途上で、新たに国主導で開発ができる状況にはない。

このように再稼働、そして革新炉の開発は、決めるのが難しいことばかりだ。そして原子力を巡り、反対を含めてさまざまな意見がある。政治的にも風当たりは強そうだ。

しかし原子力発電は、その活用によって、電力需給の逼迫、カーボンニュートラルの達成、エネルギー価格の抑制とインフレ対策など、日本のさまざまな問題を解決できる。決断できないと批判をされ続ける岸田首相の変化を評価し、その先行きを注目したい。