【特集2】簡易ガスが秘める潜在力を探る 目指すはLPガス発のスマエネ

2022年9月3日

【ニチガス】

簡易ガス事業はスマエネへ進化する可能性を秘めている。最大事業者ニチガスがそんな「次世代型」に挑む。

東日本大震災以降、エネルギー供給システムの変革を迫られる中、需要と供給を一体的に管理する「スマートエネルギーシステム」の事例が各地で生まれてきた。エネルギーの需要に応じて、従来は事業者が一方通行的にエネルギーを供給するやり方ではなく、ある時は需要を抑えながら供給し、別のタイミングでは需要を喚起していく。

個別の需要側を制御しながらエネルギーをスマートに供給する事例を、とりわけ大手都市ガス事業者が中心となり手掛けてきた。一つひとつの需要を大きく束ねることになるため、おのずと大規模な案件となり、一つの「スマートコミュニティー」となる。

LPガス事業者のニチガスも、この大規模なコミュニティーに着目して、自らスマエネの構築に乗り出そうとしている。

巨大な簡易ガス事業者 スマートとレジリエンシー

ニチガスは日本最大のコミュニティーガス(簡易ガス)事業者である。都市ガス導管の未整備エリアで、70戸以上の団地や戸建て分譲が集約された地点にガス発生設備・ガス管を整備して、一括でガス供給するのが簡易ガスだ。

ニチガスは約350地点の簡易ガスを手掛ける。メーターの取付件数は約7万件で、100戸程度から数千戸規模まで、さまざまな地点を抱える巨大な簡易ガス事業者である。

そんな簡易ガス地点を「スマコミ」へと駒を進めるためには、住民との信頼関係の構築が不可欠である。

「当社では簡易ガス地点を重要区域として、電気とガスの割安なセットメニューの販売を強化しています。お客さまにメリットを享受していただきながら、当社への信頼をより深めていただきたいと考えています」(吉田恵一・代表取締役専務執行役員)

スマエネの実現に向けて、スマート制御システムの構築も準備中である。家電を制御する通信規格「エコーネットライト」搭載の機器群を束ねていく必要があるが、ベンチャー企業と連携しながら、機器を容易に操作できる簡易リモコンの準備を進めている。

さらにニチガスは、関東の数百戸規模の簡易ガス地点を拠点として「配電事業ライセンス」の取得を目指すべく、一般送配電事業者と協議を進めている。

このライセンスを取得する事業者は、仮に有事の際に大規模系統から切り離され、オフグリッドになったとしても、地点への安定供給を維持しなくてはならない。

ニチガスは、安定供給を担保するために、LPガスによる発電設備や蓄電池、さらには太陽光発電など多様な設備群を運用しながら責務を果たそうと考えている。再エネや蓄電池を組み合わせれば、低炭素化にも資するレジリエンス性の高まった地点となり得る。

簡易ガス事業に対して、スマエネや配電ライセンスという新しい役割を担うべく、ニチガスが新たな挑戦に取り組んでいる。