【特集2】NEDO実証でグリーン化模索 特約店の環境推進をサポート
【ENEOSグローブ】
ENEOSグローブはLPガスの脱炭素化施策を展開中だ。CNLPガス販売や特約店の支援策など多岐にわたる。
ENEOSグローブは、今年度から経営企画部に、新たに「カーボンニュートラル推進グループ」を設置した。カーボンニュートラル(CN)の推進を目指して、CO2排出量の削減目標や取り組み方針を策定するほか、グリーンLPガス(合成燃料)の研究開発にも着手する。
CO2原料のLPガス製造 社会実装まで包括的に検討
サプライチェーン排出量には、燃料の燃焼や工業プロセスなど、自社の直接排出である温室効果ガスなどが該当するスコープ1、他社から供給され、自社で使用している電気や熱・蒸気の使用に伴う間接排出のスコープ2、どちらでもなく、自社以外のサプライチェーンにおける間接排出のスコープ3がある。同社のグリーンLPガス研究開発は、スコープ3の排出量削減に貢献する取り組みだ。

同研究開発は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公募した「カーボンリサイクル・次世代火力発電等技術開発・実証事業」に、富山大学と日本製鉄と共同で「カーボンリサイクルLPG製造技術とプロセスの研究開発」を提案し、4月1日付で採択されたものだ。①触媒技術開発、②製造工程、③社会実装モデルの研究開発―を実施し、事業化に向けた包括的な検討を行う。
①の技術開発として、Fischer―Tropsch(FT)合成を用いて、カーボンリサイクルLPガスを製造する。FT合成とは、一酸化炭素と水素から触媒反応による、LPガス成分を含む液体炭化水素の合成過程のこと。
②の製造工程では、火力発電所・製鉄所などからCO2を調達し、水素はコスト面で課題はあるが、再生可能エネルギーによる電気分解や海外からのグリーン(あるいはブルー)水素の調達などを想定する。また、オンサイト型のカーボンリサイクルLPガス製造では、バイオマス資源からCO2と水素を含む合成ガスを取り出す技術を検討している。これらのガスからFT合成で液体炭化水素を合成し、精製・調整を経てLPガスを製造する。
③の社会実装モデルとして、製造されたLPガスの貯蔵・輸送や、LPガスの連産品を含めた利活用などを模索する。
LPガスは国民生活に密着した重要なエネルギーだ。現在、国内需要は年間約1400万tで、全国の約半数の世帯で使用されている。同社は、化石燃料ではなく、CO2原料のLPガスを製造するための高効率な製造技術とプロセス研究開発を進める。その成果を用いたカーボンリサイクルLPガスの早期商用化よって、脱炭素社会の実現に寄与する考えだ。
米国認証クレジットで提供 特約店と手を携えて
ENEOSグローブは顧客である特約店に対して、CNを推進するさまざまな取り組みを行っている。その一つに、CNLPガスの販売がある。米国の国際NGO団体が認証したクレジットにより、採掘から燃焼に至るまでに発生するCO2をオフセットしたものだ。全国各地の顧客から多数問い合わせを受け、既に複数の契約を締結した。納入後には、独自の供給証明書も発行。グループの環境方針として「事業活動における環境保全の推進」「低炭素・循環型社会への貢献」を掲げる同社にとって、CNLPガスの販売は、その実現に資するものとなっている。
また、12年から「ECO&EARTHキャンペーン」を展開している。同キャンペーンは、エネファームのさらなる拡販、家庭用・産業用の燃料転換、省エネ機器販売の後押しなどが目的だ。特約店の事業活動を支援するとともに、低炭素かつ豊かで安心・安全な暮らしの実現を目指す。
同社は、政府が掲げる50年の脱炭素社会実現に向けて、LPガス事業を通じたさらなる施策を今後も積極的に展開する構えだ。