【特集2】下水道施設からの革新の風 再生水と消化ガスを利用
【東京ガス】
「CO2ネット・ゼロへの挑戦」―。そんな経営ビジョンを掲げる東京ガスが横浜市と連携し、メタネーションの社会実装に向けた取り組みを着々と進めている。今夏には両者が、下水道施設からの「再生水」とバイオガスの一種「消化ガス」を原料に、e―メタンの製造実証を始めた。
共同実証は、両者が2022年1月に結んだ連携協定に基づく展開だ。すでに東ガスは23年7月から、同市資源循環局鶴見工場の排ガスから分離・回収したCO2をメタネーション原料に活用するCCU(CO2の分離・回収と利用)実証を進めてきた。これを弾みに両者は、連携をさらに深めていく。
具体的には同市北部下水道センター(鶴見区)で、下水処理した水をろ過した再生水と下水汚泥を処理する工程で発生する消化ガスを回収し、近隣にある東ガスの技術開発拠点「横浜テクノステーション」内の実証設備へ輸送。そこでe―メタンをつくるという流れだ。
消化ガスの組成は、メタンが約60%、CO2が約40%という割合となっているが、一定ではない。メタンを生成するメタン菌の活性具合が季節によって変動するからだ。今回の実証では、CO2を分離させずに、組成の比率が安定していない消化ガスをそのまま使う。
東ガス水素・カーボンマネジメント技術戦略部の三浦隆弘氏は、「タンクに詰め込んだガス成分を気体の分析手法であるガスクロマトグラフで分析する。組成が変動するためガス密度が変わるが、流量計の計測値を補正するためにCO2の量を把握する」と説明する。
CO2量を計測した後、メタネーション反応に必要な適正な水素量を投入しe―メタンを作る。季節によってどれほど組成割合が変わるのか、年間を通じた実証が必要だという。
組成まで踏み込んで検証 環境価値の移転にも力
4月に始まった「クリーンガス証書」の活用も視野に入れている。e―メタンやバイオガスによる環境価値を証書にして取引する制度だ。東ガスは消化ガス由来で作ったe―メタンの価値創出にも意欲を示す。
技術開発面だけでなく、環境価値の訴求にも力を入れる東ガス。いよいよCN社会を見据えて次世代燃料技術を磨く挑戦が熱を帯びてきた。