「捨てない経済」実現へ サーキュラーエコノミーの可能性

2022年12月10日

【ENEOS】

 ENEOSが主催する新時代のエネルギーを考えるシンポジウムが11月16日、東京国際フォーラムで開催された。同シンポジウムは阪神・淡路大震災によって石油の重要性が再認識されたことを契機にスタートし、今年で27回目。エネルギーの現状や課題、今後の方向性などを考える機会を提供している。

今年のテーマは「サーキュラーエコノミー(循環型経済)」。大量生産・大量消費・大量廃棄の「リニアエコノミー(線型経済)」の対極に位置する新たな経済モデルとして、欧州で提唱された。

オランダ・アムステルダムでは2050年までにサーキュラーエコノミーへの完全移行を目標として掲げる。また欧州連合(EU)は20年にサーキュラーエコノミー行動計画を発表した。

日本の経済産業省も同年、「循環経済ビジョン2020」を策定している。循環性の高いビジネスモデルへの転換を後押しすべく、循環システムの検討が急がれる分野として、プラスチック、繊維、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)、バッテリー、太陽光パネルの五つを挙げている。

識者6人が意見交わす 意義と課題を強調

シンポジウムでは経済ジャーナリストの関口博之氏をコーディネーターとして、岩本美智彦JEPLAN会長、田中加奈子アセットマネジメントOneシニア・サステイナビリティ・サイエンティスト、所千晴早稲田大学教授、畠山陽二郎経済産業省産業技術環境局長、宮田知秀ENEOS副社長、安居昭博サーキュラーエコノミー研究家の6人がパネリストとして登壇。サーキュラーエコノミーを巡る取り組みと課題について、活発な意見を交わした。

パネリスト6人が活発な意見を交わした

サーキュラーエコノミーは、リユース・リデュース・リサイクルの「3R」と似ている。しかし、3Rが消費者中心の取り組みだったのに対して、サキュラーエコノミーは川上を含めた経済構造全体の転換が求められる〝究極の3R〟だ。畠山氏は、「3Rは最終処分量を減らそうという発想だった。サーキュラーエコノミーを目指す背景には、資源の安全保障があり、日本こそ積極的に取り組むべきだ」と強調した。

シンポジウムでは、アムステルダムのサーキュラーエコノミーに向けた取り組みなどが動画で放映され、来場者は真剣に見入っていた。宮田氏は、使用済みタイヤからタイヤ素原料を製造するケミカルリサイクル技術について、自社とブリヂストンの共同プロジェクトを紹介。こうした民間の取り組みについて、所氏は「技術は理論だけでは進まない。実証を繰り返し、課題を克服していくしかない。日本人の技術改善能力に期待したい」と語った。