【特集2】多彩な企業と連携し流通網の構築へ LPガスの輸入基地活用を模索

2024年9月3日

【三菱商事】

化学品や肥料用途向けのアンモニア・トレーディングに1960年代後半から関わる三菱商事。インドネシアでは年産70万tのプラントを持つ企業に出資するなど、生産から利用にいたる知見を重ねている。そうした中、同社はアンモニアをエネルギー燃料として新たなサプライチェーンを構築しようと動き出している。上流では、米ルイジアナ州レイクチャールズで出光興産や、メタノール製造の世界大手、スイス・プロマン社と組みながら、2030年までに年間約120万tのアンモニア生産プロジェクトを検討。このプロジェクトでは、関西電力と三菱重工業が共同開発したCO2回収の国産技術などを採用し、CCSを行いながらクリーンアンモニアをつくる構想だ。

既存インフラの活用を視野 自動車メーカーとも協力

輸送先は当然、国内向けを視野に入れる。その際、鍵を握るのが国内供給インフラの整備と利用先の確保だ。「供給インフラ面では、当社が愛媛県で保有するLPガス輸入基地、波方ターミナルの既存設備の存在がポイント」(次世代エネルギー本部の村尾亮一・次世代発電燃料事業部長)。LPガスとアンモニアは物性としての組成が似ており、既存インフラとこれまでの運用ノウハウを生かすことで、早く安全にアンモニア転用できるからだ。そうした利点を踏まえ、波方拠点の整備を進める。

さらに上流で協業する出光興産とは、出光が推進する周南コンビナートアンモニア供給拠点事業との連携も視野に、アンモニア普及の協業を構想している。

波方拠点を経由する利用先としては、四国電力と検討し石炭火力向け燃料利用を模索する。また、広島県の自動車メーカー、マツダとも協力する。地元工場で稼働している大型コージェネの燃料をアンモニアへの完全転換を模索する。もともと同社とマツダとは、工場向けエネルギー供給の事業会社を共同出資して立ち上げた経緯がある。そんな関係を生かしながら、アンモニア利用の新しいスキーム構築に奔走している。

ハブとして期待される波方ターミナル