【特集2】エネルギーと化学品のシナジー追求 脱炭素化の移行期を強力に後押し

2024年9月3日

【三井物産】

三井物産は、水素・アンモニア戦略の中で、燃焼時にCO2を排出しない「クリーンアンモニア」を脱炭素社会の実現に役立つ次世代燃料の有望な選択肢の一つと位置付け、国内外で調達先の開拓やサプライチェーン(供給網)づくりに力を入れている。同社は、経済成長が著しいアジア市場などを舞台に約50年にわたりアンモニアの取り扱い実績を積み上げてきた。その間に蓄積した経験や知見を生かしてアンモニアの利用拡大を後押ししたい考えだ。

日本政府は「グリーン成長戦略」の中で、2050年に「世界全体で1億t規模を日本がコントロールできる供給網を構築する」という目標も掲げた。

三井物産はこうした目標の達成を後押ししようと、クリーンアンモニアの製造から輸送・利用・販売にいたる一連のプロセスに参画している。ベーシックマテリアルズ本部メタノール・アンモニア事業部クリーンアンモニア事業開発室長の高谷達也氏は「これまでアンモニアを扱ってきた化学品セグメントと、エネルギーセグメントが連携してシナジー(相乗効果)を発揮し、脱炭素社会への移行期に貢献したい」と意欲を示した。

世界的な視野で市場開拓 協力的な関係で仲間づくり

米国では、窒素系肥料最大手CF Industries Holdings(米イリノイ州)との間で、窒素と化石燃料由来のブルー水素を合成した「ブルーアンモニア」の事業化に向けたFS(実現可能性調査)を進めることで合意し、22年7月に共同開発契約を締結。24年後半のFID(最終投資決断)を目標に準備を進めている。メキシコ湾で年間120万t規模の生産を目指す。

5月には、アラブ首長国連邦(UAE)のアブダビ国営石油会社(ADNOC)グループや韓国のGSエナジーと連携し、UAEでアンモニア製造プラントの建設を開始。27年に生産を始めるとともに、追加設備を導入して製造過程で排出されるCO2を回収・貯留し、30年までにクリーンアンモニアの製造を開始する予定だ。

三井物産は、国内各地で計画するアンモニア供給事業にも協力している。例えば、三井化学やIHIと手を組み、大阪堺・泉北工業地域にアンモニア供給拠点を設けるとともに、関西・瀬戸内エリアを含めた広域の需要地に供給網を形成。3社はこうした取り組みの実現に向け、経済産業省の「非化石エネルギー等導入促進対策費補助金(水素等供給基盤整備事業)」に応募し、5月に採択された。

「燃料の生産国と需要国が事業上のリスクをシェアし、協力的な関係で仲間づくりを進めていかなければ、安定成長する新エネルギー市場が育たない」とエネルギーソリューション本部水素ソリューション事業部水素マーケット開発室長の天野功士氏。豪州では、1万kW規模のグリーン水素製造設備の建設を進めている。総合商社の強みを生かし、各国・地域の需要や制度の動向を見極めながら、クリーンアンモニアに加えて水素市場も段階的に攻略する方針だ。

アンモニア製造プラントのイメージ