【特集2】ガスは日本の重要な熱源 CNと安定供給へ業界挙げ努力

2024年11月3日

燃料転換やe―メタンの技術開発など、脱炭素に向けた動きを活発化させる都市ガス業界。日本ガス協会の内田高史会長は、時間軸とコストを考慮する重要性を強調する。

【インタビュー】内田高史/日本ガス協会会長

―2020年に、都市ガス業界の脱炭素社会への貢献に向けた「カーボンニュートラルチャレンジ2050」を策定しました。進捗はいかがですか。

内田 経済産業省の省エネ補助金や環境省のSHIFT(工場・事業場における先導的な脱炭素化取組推進)事業など、政策的な支援を受け、20~23年の4年間で業務用・工業用分野において約2000件の石炭などから天然ガスへの燃料転換が進みました。これにより増えた供給量は年間10億㎥。産業用都市ガス販売量は年間220億㎥ですから、その5%に相当する大きなボリュームです。また、CO2削減が難しいハード・トゥ・アベイト(Hard to Abate)産業の燃転・構造転換に対する補助金も今年度、新たに措置されました。これにより、天然ガスへの燃料転換がさらに進むことを期待しています。

―カーボン・オフセット都市ガスの取り扱い状況は。

内田 カーボンクレジットでオフセットするカーボン・オフセット都市ガスのニーズの高まりを受け、需要は伸びています。現在、35事業者が取り扱っており、供給先は384件に上ります。e―メタン(合成メタン)の社会実装までのトランジション期においては、ガスのカーボンニュートラル(CN)化の一つの手段と位置付けて導入を促進しています。

―将来の脱炭素化には、中小事業者の供給エリアでも燃転が欠かせません。

内田 大手の供給エリアで燃転需要が多いことは間違いありませんが、中小事業者のエリア近傍でも大きな需要が存在していますし、中には事業者が大規模投資しなければ進められないケースもあります。そうした場合には、大手と中小が合弁会社を設立しガスを供給するなど、共同で投資を行っています。

 他の化石燃料から天然ガスシフトすることは延命手段だという人がいますが、そうではありません。まず、天然ガス転換でCO2を削減しさらに将来、e―メタンに転換していくのですから、ネットゼロへの動きはむしろ加速していると言えますし、業界を挙げて燃転を進めていくことは国のCN戦略の流れに沿うものです。

設備の効率最大化 地域脱炭素を後押し

―燃転に加え、高度利用のためのコージェネや燃料電池の導入にも注力しています。

内田 意外と知られていないことですが、コージェネを発電設備として見ると、導入量は850万kWに達しています。そのうち、88万kWがこの4年間で導入されたものです。また、家庭用のエネファームは50万台以上普及していて、この4年間では17万台販売されました。コージェネ、エネファームとも、今後も導入量は増えていくものと見ています。

 大切なことは、設備が個別に導入されていることに加え、スマートエネルギーネットワークとしてエネルギーを面的に活用していくためのシステムの中にもコージェネや燃料電池が組み込まれているということです。複合化された用途の需要を組み合わせることで、設備の効率を最大化することができ、徹底した省エネにつなげられるため地域のCN化の取り組みを後押しする役割を担っています。

―地域によって脱炭素化への道筋は異なります。協会としてどうバックアップしますか。

内田 地方事業者は、地域のCN実現に向け、それぞれの地域特性に合わせた取り組みを進めています。脱炭素先行地域の共同提案者に名を連ねるなど、地域のCNに貢献しようと、どの事業者も真剣です。当協会では、さまざまな取り組み事例を取りまとめて情報発信することに加え、バイオガス・J―クレジットなどの勉強会を開催することで、各事業者が地域の事情に即した手段を地方行政に提案していく流れを作ろうとしているところです。

日本ガス協会が主催する地方事業者向け勉強会の様子

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