【特集2】札幌市の複合ビルでCN化を実現 電力・熱のCO2排出量が実質ゼロ
【北海道ガス】
札幌市中央区にある超高層の複合ビル「さっぽろ創世スクエア」で使用する電力と熱のCO2排出量を実質ゼロにする―。そんな取り組みが7月に始まった。北海道ガスが北海道熱供給公社、大成有楽不動産、さっぽろ創世スクエア管理組合と連携して実現したもの。地元の民間事業者がスクラムを組みカーボンニュートラル(CN)の達成を目指す先進的な事例として、注目を集めそうだ。
同ビルのエネルギー源として、天然ガスの採掘から最終消費に至るまでの工程で発生するCO2を、森林保全などによる削減・吸収量で相殺する「カーボン・オフセット都市ガス」を利用したことが特徴。
このガスを用いて、同ビルの地下4階にあり、北海道熱供給公社が運営する「創世エネルギーセンター」では、コージェネレーションシステムとボイラーにより、施設内に電力と熱を供給する。コージェネは、出力700kWのガスエンジン2台で構成されるシステムだ。
コージェネの発電時に発生した排熱は冷暖房や給湯に利用し、入居する企業や札幌市民交流プラザへ供給。不足する電力は、再生可能エネルギー由来の「非化石証書」を活用した電気を昨年10月から北海道ガスが届ける。こうした仕組みを構築することで、同ビルで使用する電力と熱の脱炭素化を達成した。CO2排出量の削減効果は、年間で約9200tを見込む。カーボン・オフセットした熱供給は、道内では初の試みという。
札幌市は2022年、環境省による「脱炭素先行地域」として選定。札幌都心の取り組みとして、コージェネを活用したエネルギー供給ネットワークの構築が進められている。民間施設群では、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)化などを促すとともに、熱供給源として木質バイオマスなどの再エネ利用を促進。CNガスへの切り替えにより、電力・熱の脱炭素化も進めた。創世スクエアは、これらを実現した事例だ。
一方で、18年に道内で発生した胆振東部地震によるブラックアウトの際には、都市ガスの導管に被害がなく、創世エネルギーセンターがビルへ電力と熱を届ける役割を果たし、同ビルが帰宅困難者の一時滞在施設として機能した。また、地下の熱導管を通じて隣接する市庁舎への冷温水供給も継続した。
建物の環境価値を認知 災害対応力向上にも寄与
北海道ガス執行役員第一営業部長の金田幸一郎氏はこうした経緯に触れた上で、「札幌都心部に広がるガスコージェネを核としたエネルギー供給ネットワークを生かし、札幌市が目指す環境性・レジリエンス(強靭)性に優れたまちづくりに貢献したい」と強調。同部都市エネルギーグループ副課長の渡邊翔氏も「環境対策に意欲的なビルに入居したいというテナントが増える方向にある。官民の関係者と連携し、札幌都心部の電力・熱の脱炭素化を推進する一翼を担いたい」と意欲を示しており、北海道ガスの挑戦の舞台が一段と広がりそうだ。