【特集2】グループの総合力で低炭素化推進 病院のレジリエンスにも貢献<
【西部ガス】
将来の脱炭素社会を見据え、ガスコージェネレーションシステムを導入し、低炭素化とレジリエンスの両立を実現した先駆的な病院がある。
福岡県大牟田市と隣接する熊本県荒尾市にある「荒尾市立有明医療センター」は、2023年10月、敷地内に新築移転した。竣工から50年以上が経過し、老朽化や耐震補強の必要性などの課題が顕在化したためだ。
新病院は荒尾市唯一の急性期病院で、同市のほか周辺市町村の中核病院として、24時間・365日救急医療に対応しているほか、災害時にも災害拠点病院として継続した診療が可能となっている。
ここでは東京ガスエンジニアリングソリューションズ(TGES)が、系統電力の停電時も発電可能なヤンマーエネルギーシステム製の定格出力400kWガスエンジンコージェネをエネルギーサービスで導入し、メンテナンス・省エネルギー運用を実施している。
燃料の都市ガスを供給するのは、西部ガスグループ傘下の大牟田ガスだ。同センターは同社の供給区域外に立地しており、導管網と接続されていなかった。
そこで、同じく西部ガスグループの九州ガス圧送が同社大牟田工場から西部ガス熊本までの間に敷設していた総延長52 kmの中圧導管を利用した。その中圧導管から分岐する1700mの導管を大牟田ガスが新たに敷設して、同センターにガス供給している。導管はポリエチレン製で耐震性が高く、停電時にも電気と熱供給が可能だ。
導管敷設で供給エリア拡大 学校給食センターも下支え
新たに敷設した導管沿いには、天然ガスへの燃料転換を提案できる大規模需要家が複数あり、天然ガス普及に力を入れている。大牟田ガスでは、この導管沿いに22年に竣工した荒尾市・長洲町学校給食センターにも既にガス供給を開始している。
大牟田市や隣接する荒尾市は、かつて炭鉱で栄えた地域で、現在でも石炭を燃料に使っている企業もある。
一方、50年ネットゼロの流れを受け、低・脱炭素エネルギーを求める企業も増えている。そういった新規大口需要家に天然ガスを供給するため、この導管以外に総延長千m級の導管を新たに2本敷設したという。
大牟田ガスの猿渡孝徳部長は「大牟田市は人口が全盛期の半分近くまで減少している。そのため、家庭用のお客さま数とガス販売量も減少傾向にある。そこでガス販売量を伸ばすため、供給区域を広げながら、法人のお客さまの獲得に注力している」と語る。
同社の中嶋覚取締役は「今後も西部ガスグループの一員としてその総合力を活用しながら、TGESとも連携・協業し、天然ガスの普及を推進することで、地域の低・脱炭素化に大いに貢献していきたい」と意気込む。