【特集2】関西と九州で25年上期に始動 電力取引の実績と知見を生かす

2025年1月3日

【大阪ガス】

エネルギー業界で系統用蓄電池事業への関心が高まる中、大阪ガスも同事業を加速させている。2030年度までに再生可能エネルギー普及貢献量を500万kWに拡大することが目標。一方で多くの再エネが導入されると、出力変動により電力の需給バランスに影響を与えることが懸念される。電力系統の安定化に資する系統用蓄電池事業を手掛け、再エネのさらなる導入拡大に貢献したい考えだ。

現在、蓄電所の開発と蓄電池の技術実証に取り組む。蓄電所の開発では、二つのプロジェクトが進行中だ。一つが、伊藤忠商事と東京センチュリーと合弁で「千里蓄電所」を設立し、大阪ガスネットワークが所有する千里供給所(大阪府吹田市)の空き地に蓄電池(定格出力1・1万kW、定格容量2・3万kW時)を設置する取り組み。さらに、みずほリースの100%子会社、JFEエンジニアリング、九州製鋼の3社と合弁で「武雄蓄電所」を設立し、九州製鋼の敷地(佐賀県武雄市)に蓄電池(同0・2万kW、同0・8万kW時)を設置する。両案件とも、25年度上期の運転開始を目指す。

大ガスは電力トレーディングの実績と知見を生かし、卸電力市場、需給調整市場、容量市場での取引を通じて、電力系統の安定化に貢献する方針だ。電力事業推進部電力ソリューションチームの福井浩二副課長は「同事業を手掛けることで市場取引や運用方法、制度、蓄電池の性能や安全性など、さまざまな課題に気づくことができる。早期に事業化を図るには実際に携わるのが近道」と説明する。

同事業で重視するのが安全面。安全性の高い蓄電池システムの選定と安全な運用に資する技術の活用が不可欠と考えている。国内外で発生する蓄電池の火災事故を踏まえ、安全規格に適合した蓄電池であることに加えて、安全上重要な蓄電池の性能やシステムの機能に関する情報を集めるなど、対策の強化に取り組んでいる。

長年蓄電池の受託研究を手掛ける子会社KRIとの連携も深めている。「KRIの知見を生かし、蓄電池の劣化診断などの技術開発や実証を行っている。これらの技術も活用し、蓄電池の安全な運用を実現したい」(岩崎慎太郎副課長)という。

千里蓄電所のイメージ

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