【特集2】新商材で高付加価値ニーズに対応 顧客メリットの最大化を目指す
ソリューションブランド「イグニチャー」で事業拡大を狙う。
蓄電池の枠を越えたサービスで家庭市場を深耕している。
「東京ガス」
東京ガスは脱炭素、エネルギー利用の最適化、レジリエンス―という観点から、一般家庭を対象に太陽光発電(PV)や蓄電池の普及を目指している。主な取り組みの一つが、PVを導入していない需要家向け事業。価格が下がったとはいえ、PVは高級商材。購入負担を抑えるために「イグニチャーソーラー」ブランドでPV導入を支援する。
用意している「フラットプラン」では、10年間などの長期利用を前提に、イニシャルコストがゼロ(または工事費のみ)で月間の定額料金のみで導入できる。24年11月からは住宅メーカーのタマホームとも連携し、全国の新築戸建ての注文住宅で採用し、30年までに累計2万棟への展開を目指す。
また、PVの利用状況に応じて料金を支払う「PPAプラン」も用意している。自家消費分の電力は固定単価で東ガスに支払い、余剰電力は東ガスが利用する。
分散型のリソースを駆使 DRに組み込み高度に運用
二つ目が、PV導入済みユーザー向け蓄電池販売と制御サービスだ。単純な蓄電池販売ではなく、分散型リソースである蓄電池を東ガスが遠隔制御してデマンドレスポンス(DR)を行う。電力の需給バランスを確認しながら、電力が余りそうな場合に蓄電池に充電。逆にひっ迫時には放電することで、電力系統全体の運用に貢献する。一連の運用で得た利益は、事業者と需要家がシェアするイメージだ。PVを家庭用で自家消費できないケースでは、蓄電池に充電し、家庭用の脱炭素や電気代の削減を支える。こうした制御で、蓄電池導入のメリットを最大化していく。
運用面で課題もある。「分散型リソースを電力系統網と逆潮するための準備期間や需要家のDRに対する認知度の低さ、さらにはDRが電力市場で経済的にしっかりと運用できるような制度設計などが課題だ。ただ、一部の自治体によるPV設置の義務化や国が主導するZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)化の動きを考えると、家庭用の蓄電池導入のポテンシャルは大きい」と本橋裕之・BTMソリューションプロジェクト部長は話す。今回の新たなビジネスモデルは、エネルギー事業者からも注目を集めそうだ。