【特集2】デジタル技術で低圧DERを制御 消費最適化へソリューション展開
【ニチガス】
ニチガスが低圧DERの拡販に乗り出している。電力・ガスの消費最適化を進め、スマートシティ構築を目指す。
ニチガスは分散型を軸としたエネルギーソリューション事業を展開する。2018年11月に電力小売り事業を開始以降、現在の契約数は約38万件で、その多くが電気とガスのセット契約だ。今後は、これを顧客基盤に太陽光発電や蓄電池などの低圧分散型エネルギーリソース(DER)の拡販を目指す。
注力する商材が電気ヒートポンプとガス給湯器で稼働するハイブリッド給湯器だ。例えば、ニチガスが開発中のスマートリモコンと組み合わせ、通常は電気でお湯を沸かし、高需要時にはガス式に切り替えることで電力ピークカットが可能になる。また、余剰電力がある時には電気でお湯を作りタンクにためる。そのお湯は蓄電池の電気と同様、今後のエネルギーインフラに欠かせない調整力であり、ハイブリッド給湯器はいわば「エネルギーのダム」とも言える。さらに、太陽光発電や蓄電池、照明やエアコンなどの家電機器をネットワーク化して制御し、宅内のエネルギー消費の最適化も可能だ。電力事業部の清水靖博部長は「お客さまが我慢せずに電気とガスを最適に利用できるスマートハウスの普及につなげたい」と説明する。
需要家のエネ利用を最適化 供給力・調整力として活用
将来、スマートシティの規模になると、DER運用の最適化で生んだエネルギーは供給力や調整力にもなり得る。その制御の一つがデマンドレスポンス(DR)だ。電力需要のピーク時での「下げDR」で系統を安定化できる。加えて、スマートメーターの30分値をリアルタイムで採録し、AIやブロックチェーンなどのデジタル技術で、需要家同士が太陽光の余剰電力などを直接売買する「ピアツーピア取引」も可能になる。
一連の取り組みは電力ビジネス上での利点もある。下げDRでピーク値を抑えた分、容量拠出金の負担額の削減も期待できる。「例えば、負担額が減った分を料金割引へ還元するプランなど、お客さまと削減効果を共有するスキームを検討中だ」(清水部長)。魅力的なプランであれば顧客は増え、需要家DERからの供給力や調整力はさらに増加する―。この好循環の創出がニチガス戦略だ。
同社は電力とガスの供給を担い、DERの販売も手掛ける点を強みとする。来年度にはスマートリモコンの一般販売を予定する。デジタル技術も活用し、市場開拓を進めていく。
