【特集2】構築進むマイクログリッド CO2削減と災害対策強化に寄与

2025年7月3日

小規模な需要向けに再エネ主体で地域電力網を構築するマイクログリッド。再エネ利用の推進や地域防災において、各地で威力を発揮している。

昨年4月25日の夜明け前、沖縄電力管轄の宮古島市で、周辺島しょ部を巻き込んだ大規模停電が起きたことは記憶に新しい。毎年、台風による停電対応を余儀なくされる沖電だが、季節外れの被害からの復旧には、主に再生可能エネルギーと蓄電池によるマイクログリッド(MG)の威力が存分に発揮された。

宮古島の電力需給は、主にディーゼル発電が支えている。需要の変動に合わせて発電出力を調整する離島ならではの特徴だ。停電当日は、このディーゼル発電が接続する電力母線の経年劣化による不具合で、宮古島の全域停電が発生。それに伴い、宮古島から電力ケーブルでつながっている伊良部島、池間島、来間島など他の周辺離島も、停電を余儀なくされた。

全域停電から蓄電池を稼働 初の実運用が無事に成功

全域停電からの復旧時間の目途が立たない中で、いち早く復旧した島があった。人口約150人の来間島だ。

「国の補助を受け宮古島市で唯一の地域MGを構築していたおかげで、他の地域より約2時間早く停電を解消した。これまで住民の方々と協力しながら、停電からの復旧訓練を実施したケースはあったが、有事の際に本当に機能するのか分からなかった。実際に早期復旧できてほっとした」。沖電研究開発部技術開発グループの塩浜智洋マネージャーはこう振り返る。

来間島では沖電と同社関連会社のネクステムズ社が中心となり、再エネ発電事業者の宮古島未来エネルギー、地元自治体の宮古島市が連携して地域MGの運用実証を行っている。

宮古島未来エネルギーが島内の半数程度に当たる40件強の一般家庭とPPA(電力購入契約)を結び、太陽光発電や蓄電池、エコキュートといったエネルギー設備を導入した。これらの需要側のエネルギーマネジメント(EMS)をネクステムズが担っている。

沖電は、来間島全体のEMSを担うほか、中規模蓄電池(800kW時)と補充電用ディーゼル発電(100kW)などを組み合わせて運用している。平常時は再エネによる自家消費を進め、余剰時にはエネルギーを貯める。再エネ主体の地産地消を進めることが基本方針だ。

沖電はこのコンセプトのもと、自社のEMSとネクステムズの需要側のEMSを統合管理して制御している。主体は蓄電池運用だ。ただ、再エネ発電が期待できず、需給バランスも確保できない場合は宮古島のディーゼル発電からの電気で補っている。

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