【特集3】再処理の実現に向け正念場 国は消費地の理解促進に全力
青森県選出の国会議員として、原子力政策と向き合ってきた。エネルギー政策の大局観と国の本気度が重要だと指摘する。
インタビュー/江渡聡徳(自民党衆議院議員)
―日本原燃は六ヶ所再処理工場について2026年度中の竣工を目指しています。
江渡 まさに正念場といえます。最大のポイントはガラス固化です。原子力規制委員会の審査に合格しても、東日本大震災前のアクティブ試験のように再びガラス固化で不具合が生じると、県民には「またか……」という落胆が広がるでしょう。日本原燃はフランスの技術を用いていますが、ガラス溶融炉の大きさは同国の約4倍で、温度管理が課題です。炉全体の熱バランスを適切に保てなければ、ガラスの溶融状態が不安定になり、品質に影響を与えかねません。経済的な理由から今の大きさになったのだと思いますが、あらゆる知見を活用し、ガラス固化を実現するために徹底した取り組みが必要です。
―ほかに注視していることはありますか。
江渡 最も重要なのは、最終処分場の選定です。フランスやイギリスから返還された高レベル放射性廃棄物が、六ヶ所村の一次貯蔵施設に最初に運び込まれてから30年が経過しました。青森県と六ヶ所村、日本原燃は貯蔵期間を30年から50年とする協定を結んでいます。「青森県を最終処分地にしない」という約束を守るために残された時間は20年しかありません。昨年、北海道の寿都町と神恵内村で文献調査が終了し、佐賀県玄海町では同調査が始まりました。処分地選定に向けたステップの前進を大いに期待します。
―昨年11月には、むつ中間貯蔵施設が操業を開始しました。
江渡 建設前の状況を思い出します。むつ市は財政難に苦しんでいました。安定財源を求める中で、当時の杉山粛市長と話し合い、建設に向けて動き出したのです。同市には原子力船「むつ」の使用済み燃料を保管していた実績があったのも大きかった。東日本大震災などもあり、搬入までには時間を要しましたが、安定操業を続けてもらいたいです。
―核燃料サイクル実現に向けて、国に求めることはありますか。
江渡 資源が限られた日本でエネルギーの安定供給を実現するには、原子力の活用が不可欠です。いずれ水素社会が到来するかもしれませんが、安価に水素を作るには原子力が必要です。エネルギー政策は、こうした大局的な視点から取り組まなければなりません。また消費地の理解促進には、これまで以上に本気で取り組んでもらいたい。原発、再処理工場、中間貯蔵施設、将来的には最終処分場を受け入れた自治体があってこそ、安定供給は実現するのですから。
