【特集3】国力の強靭化に不可欠 安全性を最優先した取り組みを

2025年7月4日

再処理工場完工へ、新規制基準の審査が大詰めを迎えている。各施設を抱える青森県としての要望を宮下宗一郎知事に聞いた。

インタビュー/宮下 宗一郎(青森県知事)

―六ケ所再処理工場の審査が大詰めです。

宮下 まず、これまでと異なり、私自身も大詰めと考えています。竣工そして操業開始までの試験、さらには操業後の安全が確保されるように取り組むことが重要です。

―第7次エネ基では主要施設の完工が明記されました。

宮下 日本には、第二次世界大戦の歴史があり、エネルギーが枯渇して蘭仏印にまで進駐しなくてはならなくなり、結果的に300万人の国民が命を落とすことになりました。国力という意味での強靭さには、エネルギーの安全保障が非常に大事です。原子力・核燃料サイクル事業は、エネルギーの自給自足を目指し、日本にとって必要不可欠な事業として始まっているわけですから、その歴史性に鑑み、国として六ヶ所再処理工場やMOX燃料工場などの竣工、操業をしっかり進めていくことが重要なのでしょう。この国を豊かで強い国にするという意味でも、この産業をどう育てるかは、国民がしっかり考えなくてはならないし、国はぶれることなくやっていく必要があります。

―中間貯蔵施設について求めることは。

宮下 昨年11月のリサイクル燃料備蓄センターの操業開始は、2004年の本県への立地協力要請以降、20年来の取り組みが結実したもので、長い道のりでした。一方、使用済み燃料の貯蔵期間は受け入れ、または建屋の供用開始から50年間とされており、搬出までのカウントダウンは始まっています。事業者には期間内の搬出を念頭に、引き続き安全確保を第一に事業に取り組んでいただきたいと考えています。また、国は中間貯蔵後の使用済み燃料の搬出先として六ヶ所再処理工場を示したわけですから、同工場を竣工させ安全かつ安定的、さらに、長期に稼働させることに最大限尽力すべきと考えています。

―国の原子力政策への向き合い方は。

宮下 電力の安定的かつ安価な供給及び脱炭素社会の実現、そしてAIが台頭し人口減少下でも電力需要が増す中にあって、安全確保を大前提とした原子力発電及び核燃料サイクルは、エネルギー資源に乏しいわが国には必要なものです。そのため、青森県として安全確保を第一義に、地域振興や雇用に寄与することを前提として協力していきます。国には、地域と原子力施設が共生していく未来を築きながら、原子力・核燃料サイクルを主体性と責任の下、安全性を第一に、将来にわたる国民と日本のために進めていただきたいと考えています。

みやした・そういちろう 1979年青森県生まれ。2003年東北大学法学部卒業。同年4月、国土交通省入省。14年よりむつ市長を3期務め、23年6月から現職。