【特集2】ガスエンジン使い風力を安定電源に 系統運用に貢献する新たなモデルへ
【北海道ガス】
GX(グリーントランスフォーメーション)・DX(デジタルトランスフォーメーション)で電力需要の拡大が見込まれる中、3月1日に商業運転を始めた北海道ガスの北ガス石狩風力発電所を舞台に、系統安定化に資する新たな再生可能エネルギーのモデル化への挑戦が始まった。同発電所と、系統への連系点が異なる北ガス石狩発電所(LNG火力)を一体的に運用して常に定格で接続し、送電網の負荷軽減を目指す。

生産技術部建設推進グループの沖田雅夫マネージャーは「再エネが拡大していく中での系統運用を送配電事業者任せにせず、火力発電事業者も一定の役割を担えないかと考えた。既存インフラと再エネとの親和性を確認していく」とその意義を説明する。
同社は2030年度までに再エネ取扱量15万kWを目標に掲げており、石狩風力発電所は同社グループが初めて自社建設した風力となる。出力2000kWのFIP(市場連動買い取り)電源だ。
一方、石狩発電所はガスエンジン12台、計9万kW強で、同社の電力販売を支える主力電源として18年から稼働する。従前から他の地域の再エネをいくつか束ね、その調整用電源としても活用。計画値同時同量でインバランスの回避に努めてきた。今回の運用もインバランス回避につながる点は共通しているが、さらに風力と火力を1対1で運用する。定格出力、かつ風力と火力が別系統に連系しているという点で、他に類を見ない取り組みといえる。
精緻な制御で変動分を調整 貴重なノウハウ獲得に期待
系統運用者である北海道電力ネットワークが求める条件をクリアできるよう、これまで以上に精緻な制御を行っている。基本的に風力はフルで稼働し、出力が2000kWに満たない場合はまずガスエンジンの稼働で調整。それでも取り切れない変動分は1800kW時の蓄電池(風車1時間の発電量に相当)で対応する。今のところ運用面で大きな問題は生じていないという。
FIPのプレミアムは市場価格に連動しており、価格が高い時間帯に供給する電源へのインセンティブを高める設計となっている。他方、同社の場合はピークシフトによる収益向上は見込めない代わりに、安定再エネ電源という価値を重視した。加えて、ガスエンジンの活用で、従来の風力に蓄電池を併設する場合の規模と比べて、蓄電池容量を半分程度に抑えることができた。その分、初期導入コストの削減につながっている。
沖田氏は「貴重な化石資源をうまく使い、再エネを長期にわたり環境価値を提供する安定電源とすべく、チャレンジしていきたい。さらに今回、風車や蓄電池の建設から運用までを経験することで、当社にとって貴重なノウハウを得られる。30年目標に向けた再エネ開発の足掛かりとしても重要な意味を持つ」と強調している。