50年ビジョンを策定し具体策明示 顧客目線で都市ガス業界の未来像描く

2025年7月4日

【日本ガス協会】

2050年の都市ガス業界のビジョン、その実現に向けた30年までのアクションプランを策定した。

S+3Eを重視しつつ、顧客にとって最適なソリューションを提供する姿を明確にした。

日本ガス協会は6月3日、2050年に向けた都市ガス業界の長期ビジョン「ガスビジョン2050」を公表した。サブタイトルに「お客さまにとっての最適なソリューション提供を目指して」を掲げ、顧客目線を重視するとともに、中小を含む全ての都市ガス事業者が主体的に取り組めるよう意識。20年11月策定の長期ビジョン「カーボンニュートラル(CN)チャレンジ2050」がCN化に焦点を当てていたのに対して、今回はS+3E(安全性、安定供給、経済効率性、環境適合性)とのバランスをより考慮している。

ビジョンとアクションプランの概要
出典:日本ガス協会


多様な手段でCN達成 技術進展などに応じ変更も

新たにビジョンを策定した背景には、地政学リスクの顕在化などの環境変化を踏まえて、政府がエネルギー政策の方向性を見直したことがある。2月に閣議決定した第7次エネルギー基本計画では、S+3Eの観点をこれまで以上に重視し、天然ガスをCN実現後も重要なエネルギー源として位置付けた。そして、50年の都市ガスCN化へ、e―メタンやバイオガスの導入など、さまざまな手段を組み合わせて実現を図ることを明記した。こうした政策動向に歩調を合わせた形だ。

ガスビジョンは、①災害に屈しない社会・産業・地域の構築に尽力する、②お客さまに選ばれ続けるソリューションを提供する、③お客さま・地域のCN化実現に貢献する―の三つの

個別ビジョンで構成している。具体的に①では、レジリエンス(強靭性)を確立するために事業者設備の完全耐震化を目指すとともに、次世代スマートメーターなどのセンサーネットワークを活用した予知保全により、事故ゼロを追求。合わせて、設備の経年劣化に備える計画的な設備改修などを継続して推進し、「変わらぬ安心」を提供する。また、エネルギーセキュリティの向上を図るため、エネルギーの安定調達に加え、ガスと電力のベストミックスにより、柔軟かつ強靭なエネルギーインフラの構築を目指す。

②では、コージェネや再生可能エネルギーなど多様なリソースと、AI・DXを活用した高度な制御技術により、エネルギーシステム全体の進化を図る。さらに、e―メタンやバイオガスの供給、地産地消の取り組みなどを通じて地域のCN化を推進するほか、地方創生や地域経済の循環に貢献する仕組みを構築する。また、既存インフラや設備を最大限活用するとともに、CN関連技術のコスト低減を図り、経済的かつ安定的な供給を実現する。

③では、50年のガスのCN化実現とその手段として、e―メタンとバイオガスで90~50%程度と幅を持たせ、残る10~50%程度はCCUS(CO2回収・貯留・利用)やDAC(直接空気回収)、カーボン・オフセットなどを組み合わせた天然ガスで対応。残る数%程度は水素直接供給を想定している。日本ガス協会の内田高史会長は「CN達成に向けて、その時々の最適な手段を組み合わせるのが基本的な考え方だ。各比率は技術開発の進展度合いなどによって変わっていく」と説明した。

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