【特集2】 サテライトでLNG供給 重油比でCO2を3割削減へ

2025年8月3日

【岩谷産業】

日本海に面し近畿・中部エリア最大級の工業団地である「テクノポート福井」。北陸新幹線が開通し都内からのアクセスが容易になった福井駅から車で40分ほどの場所にある産業拠点だ。1957年に創業し、73年からは50年以上にわたって電池用材料の開発・製造を手掛ける老舗メーカーの田中化学研究所もその一角を占める。

同社は「三元系正極材」と呼ばれるニッケル・コバルト・マンガンの三元素の化合物から生産する二次電池向けの正極材を手掛けている住友化学グループの化学メーカーである。電気自動車やハイブリッド車向けの車載用を中心に、スマートフォン、コードレスタイプの一般家電、さらには緊急時用の蓄電池に至る、身近な生活品から産業インフラまでを素材メーカーとして支えている。

「10年前と現在とでは、求められる電池の品質が全く異なっている。モノづくりメーカーのノウハウを駆使しながら、各製品の特性に応じて正極材の品質を作り分けている」。環境安全部の平野孝部長はこう説明する。

新設した100㎥のLNGタンク(3基)

CO2削減対策に本腰 昨春からボイラー切り替え

そうした中、同社は今、CO2削減対策に本腰を入れている。従来利用していたエネルギーは、フォークリフトや非常用発電機向けの軽油燃料、厚生棟向けのLPガス、本社棟や工場向けの電力、工場内の生産工程における熱源用の重油だった。

まず、電力利用については、電力会社からグリーン電力を購入することで低炭素化に対応した。次に取り組んだのが生産工程で活用する重油ボイラーの対策だった。

「環境に優しいエネルギーといったらLNG。周辺の工場でも少しずつその利用が進んでいた。当社としても2020年ごろに導入の検討を始め、天然ガス式のボイラーを採用した。設備更新はバーナーだけの一部の交換で済ませることができた」(平野部長)。昨年の春から順次、設備を切り替えて運用している。

電力会社のグループ会社からの長期リースにより、100㎥のLNGサテライトタンクを敷地内に3基新設した。燃料となるLNGは、岩谷産業がタンクローリーで運んでいる。岩谷産業エネルギー本部産業エネルギー部の西浦駿将主任は「特に冬場のローリー輸送は毎日が緊張の連続だ。LNG基地を保有する電力会社とも連携しながら、万全の供給体制を敷いている」と話す。

平野部長によると重油と比べても遜色のない価格帯になっており、年間を通じてCO2排出量を約3割削減する見込みだという。

「電池素材メーカーは中国系の企業が台頭してきている。今回のボイラーは金属を溶かす工程や乾燥工程で活用している。溶解具合や乾燥具合などにおいて当社のノウハウを駆使しながら中国系企業に負けない品質の素材を作っていきたい」。平野部長は今後の抱負をこう語った。