【特集2】 技術的な知見伝承を重要視 小規模ユーザーへの提案も積極化

2025年8月3日

【秦野ガス】

神奈川県秦野市を中心に、伊勢原市や平塚市の一部に供給する秦野ガス。東京ガスから卸供給を受け、需要家数は約1万5000件。これまで区域内の工業団地で、都市ガスの中圧導管から複数のユーザーに大規模な燃料転換を実施した。ブタン燃料や重油を使った、東証一部上場企業のグループ会社からの低炭素化ニーズに対応してきた。

CN都市ガスへの転換も実施した

「一例を言うとブタン燃料を使っていた金属加工系のお客さまからは、(ブタン)調達の煩雑さを理由に都市ガス供給へ切り替えていただいた。導管によって供給安定性は増したと思う。こうした取り組みは当社にとって大きな財産になった。お客さまがどのようなボイラーやバーナーを使い、生産プロセスでどのように熱を使っているのか把握する機会になったからだ」と飯田昌一常務取締役は振り返る。

エネルギー供給事業者としては、そうした技術的な知見を持ち合わせておくことで、スムーズな燃転を実現できる。このような技術を若い世代に伝承していく必要性を感じているそうだ。「お客さまの事情もあるので難しいが、理想を言えば技術伝承が途切れないように一定の期間ごとに燃転を実施していきたい」(飯田常務)

CN都市ガスへの燃転実施 工業団地誘致計画に注視

現在、エリア内の大口ユーザーの燃転は、都市ガス事業の新規参入者含めておおむね終了。残すは毎時1t未満のボイラーを活用している小規模ユーザーへの提案だ。飯田常務は「定期的にお客さまのところに顔を出し、ニーズを確認している。設備更新のタイミングに合わせて燃転を実現できればと思う」と話す。最近では東海大学などの大学キャンパスや地元の市役所へカーボンニュートラル都市ガスへの燃転も行っている。

一方、同社エリアでは燃転以外で大きな需要拡大が期待されている。それは、市が新東名高速の秦野丹沢スマートインターチェンジ付近に誘致を進める工業団地の新設計画だ。同社エリア内から2kmほどの距離だという。今後、秦野ガスによる供給が実現できるのかが注目される。