【特集2】 鍵握るバーナーの燃焼技術 供給拠点整備でガス・ガス転換
【東京ガスエンジニアリングソリューションズ】
燃料転換を進める上で鍵を握るのがガスバーナーの燃焼技術だ。TGESは豊富な燃焼技術を使ってユーザーの燃転をサポートしている。
化石燃料の中でCO2排出量が最も少ない天然ガス。脱炭素化に向けた取り組みの一つとして、燃料を天然ガスに転換するニーズが高まっている。
こうした中、東京ガスグループの東京ガスエンジニアリングソリューションズ(TGES)は、モノづくりの現場での燃料転換を進めている。得意とするのが、プロパンやブタンを主成分とするLPガスから天然ガスへの燃料転換だ。

「油からガス体への燃料転換になると配管から燃焼機器まで大掛かりな設備交換が必要になるケースが多い。それよりもガス体同士の方がバーナーの調整だけで済むことが多いため、お客さまにとってコスト的に楽に転換できる」。産業エネルギー営業本部の家中進造産業技術部長はこう話す。
東京ガスは1969年、日本で初めてLNGを輸入し、都市ガスの原料として使用を開始した。以来、熱量の低いガスから、現在使用されている高カロリーの都市ガス「13A」へ転換してきた。その際、需要家先の多種多様な設備の切り替えに対応したことで、燃焼を含めた一連の技術を蓄積。TGESはこの受け継いできた技術をもとに、脱炭素化に向けた燃料転換に生かしているわけだ。
東北エリアの転換支援 安全性や品質維持に注力
TGESが手掛けた事例が、東北エリアの床材・壁紙などの建築内装材メーカーの工場だ。このほど、燃焼炉の燃料をLPガスから天然ガスに転換した。その際、主に三つのポイントが挙げられる。
一つ目が事前に行う調査だ。まずは、バーナーの特性の把握から開始した。LPガスと天然ガスでは燃焼特性に違いがある。そこで、「ウォッベ指数」と呼ばれる指標を使い、バーナー用に供給するガスの比重や熱量を確認。体積当たりのエネルギー量を踏まえ、ガス配管の口径もチェックした。
燃焼技術グループの鎌田裕也氏は「工場にある全てのガス配管を調べ、既存の配管のままで転用が可能か、新設が必要かを判断した」と振り返る。また、部品類に関しては、バナーノズルや電磁弁といった必要最低限のものだけを交換。これにより、工事の日数を短縮すると同時に、費用の削減にもつながった。
二つ目としては、生産現場の安全性配慮が挙げられる。天然ガスが燃焼するのに必要な空気が不足すると、一酸化炭素が発生し危険な状態になってしまう。燃焼効率だけではなく、混合する空気の比率を適正化することで、安全に使用できる環境整備にも腐心した。こうした安全性の配慮は、気体燃料の燃焼の特徴を知り尽くしたガス会社ならではの強みと言える。
最後は、製品の品質維持をサポートすることだ。バーナーの燃焼状態や昇温スピードなどは、ユーザーが手掛ける製品の品質に直結する。ユーザー側から求められた条件に即して転換工事を実施した。

欠かせない安定供給体制 日立基地の整備が契機
燃料転換では、安定したLNG供給体制が欠かせない。東北エリアへの供給には、2016年に運転を開始した東京ガスの日立LNG基地が大きな役割を果たしている。
今回の工場では、敷地内にLNGサテライトタンクを新設。高速道路などを使い、日立基地から陸路でタンクローリーによる輸送を行っている。福島県内では、「LNGサテライトタンクをつくり、密集した10件ほどの需要家に対して導管供給を行っている事例もある」(燃焼技術グループの小谷野将史係長)
供給インフラの整備も重要なポイントだ。LNGサテライトタンクを建設してLNGローリー車による供給を行うか、導管の延伸による都市ガス供給をするかは、それぞれの整備費用やLNG基地からの距離や供給先の需要量などを踏まえて判断している状況だ。
製造現場では、脱炭素化を視野に入れたモノづくりをしながら、品質や生産効率を向上させ、競争力を高めることが求められている。その一方で、これまでLNG供給ができなかったエリアを中心とする工場では、LPガスを燃料にした工業炉が多く存在する。重油燃料もしかりだ。燃料転換のニーズがあっても、当時の工業炉バーナーメーカーの廃業などで対応できないケースもあるという。TGESは、こうした現状を踏まえ、燃料供給で培った知見を最大限に活用しながら、今後も燃料転換を着々と実施していく構えだ。
