【特集2】新たな需要創出に期待感 ニーズに応じ政策検討

2025年8月3日

政府は、CN実現後も重要なエネルギー源と位置付けた。天然ガスのさらなる普及拡大へ政策の方向性を聞いた。

インタビュー/迫田英晴(資源エネルギー庁ガス市場整備室長)

―産業用分野のエネルギーの脱炭素化には、天然ガス転換は欠かせません。


迫田 天然ガスは熱源として非常に効率がよく、他の化石燃料と比べてもCO2排出量が少ないという点で非常にメリットがあります。社会全体のカーボンニュートラル(CN)化を実現するには、需要サイドで石炭、重油から天然ガスへの転換をしっかりと進めていく必要があると考えています。


―第7次エネルギー基本計画で、2050年を超えても重要なエネルギーと位置付けられたことは大きな後押しです。

迫田 LNGは長期契約が主体ですし、需要家も10数年単位の長期的な視点で設備投資を判断しなければなりません。ですが、今はエネルギー情勢が大きく変化し不確実性が高まっています。そこで事業者の予見性を高めるため、国全体の方向性を示したのが今回のエネ基です。これを機に、ガス事業者が産業用需要家との対話を一層前向きに進めることで、安定供給と低・脱炭素化のニーズに応えていけると期待しています。


―ポテンシャルをどう見ていますか。


迫田 鉄鋼や化学、紙パルプやセメントといった分野で、燃転により大きなガス需要が生まれるポテンシャルがあると見ています。ただし大きな経営判断を伴いますので、ガス事業者がしっかりと対話していく必要があるでしょう。


―天然ガス普及拡大のためのインフラ投資への支援についてはいかがですか。

迫田 一般的にポテンシャルがあるとは言っても、需要家がどこまで対応するのかなどによって求められる政策ニーズは異なります。これまでは徐々に燃転が進み、事業者が個々に対応してきましたが、エネ基を機に事業者と需要家の対話が加速することも考えられます。そうした対話を通じて出てきた課題について耳を傾けながら、必要に応じた措置を検討していく方針です。パイプラインを新設するにしても、託送料金に影響することになりますので、ポテンシャルを精緻に見極めながら対応していくことになります。


―地方ガスの役割をどう考えますか。


迫田 地域社会に根差し、自治体とも連携を図りながらガスの供給だけではなく街づくりに関与し生活インフラ事業を展開していることは大きな強みです。だからこそ、大手と一体となったe―メタンの導入や、地域の実情を踏まえた資源循環の仕組みの構築など、CNの観点を踏まえた地方創生で大きな役割を果たせると考えています。

さこた・ひではる 2004年東京大学経済学部卒、経産省入省。電力・ガス取引監視等委員会取引制度企画室長、資源エネルギー庁電力供給室長、内閣官房新しい資本主義実現本部企画官などを経て25年7月から現職。