【特集2】ボンベの運搬をスムーズに 現場ニーズに応えた電動台車を発売

2025年9月3日

【ENEOSグローブ】

LPガスボンベは総重量約90kgにもなり、配送の現場は重労働であることが課題。ENEOSグローブは、現場のニーズを捉えた運搬用電動台車を販売中だ。

ENEOSグローブはこのほど、運搬機器の製造・販売などを手掛けるCuboRex(キューボレックス、東京都)と共同開発したLPガスボンベ運搬用電動台車「らくらくエネキャリー」の販売を開始した。台車にはCuboRexが開発した電動化キットを搭載。ブラシレスハブモーターがタイヤの動きをアシストし、フル充塡時に総重量約90kgになるLPガスボンベを載せた状態でスムーズに運搬できる。出力を5段階で制御でき、最高速度は時速6km。縁石の段差や砂利道といった平坦でない場所の運搬も可能だ。1回の充電ごとに、最大出力時で2時間、通常出力では2、3日ほど稼働できる。

初心者でも使えるシンプルな構造だ

安全性へのこだわり ハンドブレーキを標準装備

開発を担ったのは2023年に新設された事業創造室。新規事業の立ち上げがミッションだ。「部内で考えたアイデアは150ほど。その中でもLPガス事業者の困りごとを解決できるツールを作りたいと考えた」。森脇栄治事業創造室長はこう振り返る。

開発時に注力したのが、現場のニーズを踏まえた設計だ。一つには、運搬時の負担が大きい坂道での走行性が挙げられる。曙ブレーキ工業のテストコースを借り、傾斜での動きを確認する試験を実施。勾配35%(斜度20°ほど)の急坂でも軽々と上れることを実証した。一方、持ち手にはハンドブレーキを標準搭載し、下り坂でのスピードが出過ぎるのを防ぐ安全性にも配慮した。

もう一つは、長期間にわたって使い続けられることだ。フレームにアルミ二重構造を採用し、耐久性を向上させた。その上で、交換が必要になった場合に備え、フレームのみを取り換えられる構造を採用。電動化キットはそのまま継続して使用できるようにした。バッテリーもHiKOKI(ハイコーキ)製の汎用タイプであるため、簡単に交換が可能だ。

モノづくりは同社にとって初めての経験。車輪部分の異なるプロトタイプを3種類作り、使いやすさと低コスト化実現のため試行錯誤を重ねたという。また、販売店が購入しやすいよう、専用のECサイトを立ち上げた。森脇室長は「まずは使っていただき、現場の意見を聞きながら改良を重ね、より良い製品を作っていきたい」と意欲を見せている。