【特集2】災害時も空調の稼働を継続 熱中症対策と避難所機能を両立
【I・T・O】
I・T・Oが手掛ける防災減災対応システム「BOGETS(ボーゲッツ)」の導入が、小中学校をはじめとする教育機関で進んでいる。同製品は災害発生時、都市ガスの供給が途絶えた時にバックアップ燃料に切り替えることができる。具体的には、ガス変換器「New PA」でLPガスを都市ガスの代替となるプロパンエアーガスに変換して供給する。専門的な知識がない職員やスタッフでも、簡単なタッチパネルなどの操作で切り替えられるのが大きな特長だ。避難場所となる体育館に停電対応型GHPがあれば、空調を復旧し、継続して稼働できる。
直近では、名古屋市の小学校に採用された。同市では、2020年に小中学校の体育館への空調設備導入を決定し、110校ある中学校に導入した。その後、260校ある小学校への導入が順次進んでいる。市が空調設備導入を検討していた段階から、同市会議員のたなべ雄一氏はBOGETSに注目。すでに同設備を導入していた足立区の小学校を視察し、防災機能としての体育館空調維持の重要性を名古屋市議会で訴えた。これにより、全小学校に空調を設置するとともに、避難所の収容人数が過密となると予想される地域の51校の体育館にBOGETSを設置することになった。今後5年かけて設置していく計画だ。

体育館空調に追い風 35年度に設置率95%へ
各自治体で導入が進んでいる背景としては、文部科学省が24年度補正予算で創設した「特例交付金」の影響が大きい。同制度は体育館空調設備に特化しており、全国で総額779億円が計上された。従来は校舎改修やトイレ洋式化などと競合していた交付金が、空調整備専用枠として自治体に提供されている。さらに、石破茂首相が防災庁を創設すると宣言したことも後押しとなった。政府は学校体育館の空調設置率を同年9月の18・9%から35年度には95%まで引き上げる方針を打ち出している。

営業本部の愛田政司部長は「自治体向けに都市ガスエリアではBOGETS、導管が通らないエリアではLPガスの災害対応型バルクを提案している。今夏は北海道でも35℃を超える日が続いた。全国で熱中症対策と避難所機能の両立を図る動きが広がる見通しなので、当社としても貢献していきたい」と抱負を語った。
名古屋市の事例は、燃料多重化によるレジリエンス強化のモデルケースとなる。全国の自治体にこの動きが波及していくと見られる。