【特集2/座談会】独自の販売戦略で難局乗り切る 地域密着で顧客満足を追求
長年の課題だった液石法の省令改正は、販売の現場をどう変えるのか。求められているのは、今まで以上にユーザーの視点に立った販売戦略だ。
古川剛士/古川社長
中岸真史/鳴門ガス社長
〈司会〉角田憲司/エネルギー事業コンサルタント

角田 液化石油ガス法(液石法)の省令改正など、LPガス業界は大きな転機を迎える一方、地域エネルギー供給の担い手としてLPガス会社の役割は高まると思います。まずは皆さまの簡単な自己紹介をお願いします。
中岸 徳島県鳴門市内のLPガス販売店が数社集まり1968年に創業し、以降、市内を中心に事業を展開しています。LPガスならではということで、地域密着型を志向しています。基本的にはガス配送、ガス機器の修理や取り替え工事を含めて全部自社で展開していこうという思いがすごく強い会社で、ガス屋らしいガス屋だと思っています。LPガスの供給件数は約1万件です。
古川 神奈川県小田原市で事業を手掛けています。創業は1911年と古く、当時は地元で魚の卸業をしたり、製氷事業を手掛けていました。その後、事業の形を変えて55年頃からLPガス販売に取り組みました。観光地の箱根が近く、ホテルなどの業務用のお客さまが多数います。LPガスの供給件数はおよそ9500件です。
「必ずしも違法ではない」 ブローカー問題に地域差
角田 商慣行の是正に向けて液石法の省令が改正されました。今後は過大な営業行為の制限や三部料金制の徹底などが求められます。どのように受け止めていますか。
中岸 徳島県は課題がそれほど深刻なエリアではありません。ブローカーによってこれまで強引にお客さまを「取った、取られた」ということは聞きませんし、今回の改正で特段の変化はありませんね。
アパートの賃貸オーナーさんなどに改正の経緯や事情の説明、情報の共有化を図りましたが、結果的に供給元が変わった事例は1件もありませんでした。他社からも深刻な事態だとは聞いていないので、落ち着いている状況だと思います。
角田 「ブローカーが暗躍している」「改正省令を順守しない営業が続けられている」といった報道が見受けられます。そういう状況はあまりないということでしょうか。
中岸 四国圏内の他県の詳細は存じ上げません。少なくとも徳島には関西系が1社、関東からも2社がエリア外から販売していますが、現状ではそれほど話題にはなっていません。
古川 私どものエリアでは「(無償で設備を貸与しないのだったら)別の販売店へ切り替える」というケースが何度かありました。ただ、以前が大変な状況だったと考えるとかなり減ってきたと実感しています。一方、戸建ての場合でも、まだブローカーによる強引な切り替えは起きてはいますが、減ってきたように感じます。
角田 この問題は地域によって温度差があることは理解しておく必要がありますね。まだブローカーによる強引な切り替えが起きている神奈川県のような状況にどのように対処すべきか。特に戸建てでは画期的な対策はありませんが、地元の消費者センターなどと連携して相互監視を強めて取り締まる必要があります。あるいは「(ブローカーを通じて)ガス料金が安くなる」と勧誘しつつも時間の経過を見計らって値上げする「独占禁止法上の不実告知」に当たる事例に対して、しかるべき措置を取るなど、地道な活動を重ねるべきだと思います。ちなみに、賃貸集合住宅で切り替えられた時、残存設備の買い取りを大家さんにしていただきましたか。
古川 していただきました。
角田 それが以前とは違う点ですね。
古川 そうですね。
角田 ただし有償でオーナーが買い取るケースでも、その費用を切り替え先の事業者がサポートしている可能性があります。しかし、これは必ずしも違法とは言えないということには留意が必要です。さて、中岸さんの会社では「即湯サービス」というユニークなサービスを展開しているそうですが、詳しく教えてください。