廃食油由来の軽油燃料で脱炭素 既存インフラ活用で低コスト運用

2025年9月8日

【伊藤忠エネクス】

輸送部門の低炭素化が喫緊の課題である中、伊藤忠エネクスがトラックなどの輸送燃料の脱炭素化に向けて、バイオ燃料である「リニューアブルディーゼル(RD)」の普及に力を入れている。世界最大級のRD燃料メーカーであるフィンランドのネステ社と連携し、ネステ社が製造した廃食油や廃動植物油由来のバイオ燃料を伊藤忠グループが調達し、エネクスが国内で販売する。

ネステ社から調達する

バイオ燃料には大きくFAME(脂肪酸メチルエステル化)とHVO(水素化植物油)の二つの製造方式がある。どちらも植物油や廃食油から製造するが、エネクスが扱うのは後者のHVOだ。 「品質に大きな違いがある。HVOは製造コストが若干高いが、長期貯蔵に優れている点や寒冷地での利用が可能だ。また混合利用が前提のFAMEに対し、HVOは既存の軽油と性状が同等であるため単体利用が可能だ。これにより日本の法制上は対軽油比で100%CO2を削減する。」

同社産業ビジネス開発部次世代燃料販売課の相澤隆太主任は説明する。こうした特徴により既存の燃料供給インフラや利用側の輸送車両や発電設備をそのまま活用可能で、全体負担を抑えて運用できる。さらに同社では軽油にRDを40%混合した製品の供給も開始しており、需要家がより使いやすい環境を整えている。


シンガポールから製品輸入 ファミマやサントリーで実積

現在、ネステ社では世界各地で年間550万tのRDの生産体制を整備している。内訳はフィンランド(50万t)、オランダ(140万t)、シンガポール(260万t)、アメリカ(100万t)の4地点だ。その中で、エネクスではシンガポール製油所から輸入し、横浜港で受け入れている。そこからタンクローリーを使って、東京、神奈川、愛知、大阪の4地点に整備した給油所に運んでいる。

これまで、ファミリーマート、サントリー、西武バス、JR西日本などで利用実績があるほか、竹中工務店や大林組が大阪・関西万博における建設工事のフォークリフトの燃料として活用した実績がある。 ちなみに「RDは軽油と同等の品質にもかかわらず法令上は炭化水素油と定義されている。そのため、国の政策で支援していたガソリン・軽油補助金が鉱物油由来の石油燃料を対象としていたため、補助の対象外」(同)だそうだ。

脱炭素燃料であるにもかかわらず補助対象外というのはユーザー側から怨嗟の声が聞こえてきそうだ。いずれにせよ、RDによって軽油の脱炭素化がどこまで進むか注目される。