【記者通信/9月1日】東急PSが蓄電池1000台を無償配布 都市型VPP活用も視野に

2025年9月1日

東急パワーサプライ(東京都世田谷区)は8月28日、東京都内の戸建て世帯を対象に蓄電池1000台を無償で配布する「てるまるでんちプロジェクト」を始めたと発表した。都の助成金を活用し、蓄電池本体や工事、保守の費用はすべて同社が負担する。蓄電池は家庭の電気料金の抑制や防災に寄与し、需給がひっ迫した際には各蓄電池を束ねてVPP(仮想発電所)として運用することで、都市部のレジリエンス強化につなげる狙いがある。

蓄電池の大規模配布プロジェクトを発表した東急パワーサプライの村井社長(右)と冨山氏(同社提供)

利用者は、市場価格に応じて30分ごとに料金単価が変動する「ライフフィットプラン」への加入が必須で、ほかにも太陽光パネルやエネファームなどの発電設備を設置していないことなどが条件となる。蓄電池は同社が遠隔制御し、料金の安い時間帯に充電した電気を高い時間帯に使うことで、年間で約3万3千円の削減効果が見込めるという。また、常に3割以上の容量を残しながら運用するため、停電時でも電力を利用でき、利用者は行動変容や特別な操作なしで節約と防災を両立できる。

蓄電池で採用したのは、パワーコンディショナーの製造などを手掛けるオムロンソーシアルソリューションズ製の大容量型。1台あたり12.7kW時の容量を持ち、1000台で計1万2700kW時となる。これは系統用蓄電池2~3台分に相当する規模で、東急パワーサプライはこれをVPPとして活用し、都市部の電力安定化に貢献したい考えだ

「蓄電池を当たり前の生活インフラに」

1000台もの蓄電池を無償で配布するのは異例の取り組みだ。プロジェクト責任者の冨山晶大シニアアドバイザーは、「蓄電池の普及拡大はもちろん、将来的には需給調整市場や容量市場を通じた収益化を見込んでいる。1000台であれば市場参加の最低ラインを満たし、投資リスクとしても折り合いがつく」と述べ、大規模展開に踏み切った背景を明らかにした。

同社の村井健二社長は、「都には手厚い支援制度があるにもかかわらず、太陽光発電に不向きな住宅が多いことや費用負担への懸念から、導入は進んでいない現状がある。今回のプロジェクトを通じてこれらの課題をクリアにし、蓄電池を『当たり前の生活インフラ』として広げていきたい」と意気込みを見せている。