臨海副都心エリアのCO2削減へ 地域熱供給に水素混焼ボイラー導入

2025年9月4日

【東京都港湾局ほか】

東京都港湾局は7月、地域熱供給用途で全国初となる都市ガスと水素の混焼ボイラーを稼働させた。この事業は都の「臨海副都心カーボンニュートラル戦略」の一環であり、東京臨海熱供給の青海南プラント(江東区)に同ボイラーを設置した。

臨海副都心・青海地区は、オフィスや商業施設、ホテル、病院などが混在するエリアだ。東京臨海熱供給はCO2削減に取り組み、2000年比で今年中に50%の削減を目指している。現時点で約40%削減を達成しており、今回の水素混焼ボイラー導入で、これを加速させたい狙いがある。

水素混焼ボイラーでCO2を半減


貯蔵タンクに新技術採用 着火を防ぎ安全性を高める

今回の水素混焼ボイラー設置において、港湾局は企画や用地提供、産業技術総合研究所(産総研)は技術開発とデータ分析、清水建設はタンク自動運転化システム開発、東京臨海熱供給は混焼ボイラー設置と運転、東京テレポートセンターは建物照明など施設の提供、ヒラカワはボイラーの運転と技術開発をそれぞれ担当する。

導入した水素混焼ボイラーは、水素を最大50%混焼した場合CO2排出量をほぼ半減できる。都市ガスのみでの運転も可能で、安定した稼働が確保できる設計となっている。

水素供給に利用するタンクは、産総研と清水建設が開発した水素吸蔵合金タンクを採用した。水素吸蔵合金は金属の微粒子状で、純水素を圧力下で吸着させると、スポンジが水を吸うように水素を取り込むことにより、常温常圧の保管よりも約1000倍の密度で水素を蓄えられる。

新素材を採用した水素タンク

ただ、従来の合金は吸収時に粉砕しやすく、粉末化した合金は着火性が高まるため危険物として扱われ、貯蔵量が制限されていた。そこで両者はより多くの水素を安全に貯蔵するため、割れにくい新合金を開発した。

燃料となる水素は山梨県甲府市米倉山のプロジェクトからグリーン水素を調達している。

東京都港湾局の水飼和典開発調整担当部長は「臨海副都心の脱炭素化をさらに推進するとともに、水素活用の新たなユースケースとして需要拡大と社会実装の加速につなげたい」と語った。次世代燃料の活用においても首都のリーダーシップを発揮していきたい構えだ。