【特集2】次なる普及策へ業界の挑戦 利用者のDR参加をどう促すか

2025年10月3日

累積普及台数が大台を突破したエコキュート。次なる普及シナリオの確立を目指す業界の挑戦が始まっている。

「発売当初は携帯電話の初期のように毎年右肩上がりで出荷台数が増えていった。国の補助金や深夜の割安な電気料金メニューを組み合わせたことで、家庭用設備機器としては異例のヒットとなった」。累積出荷台数が節目の1000万台を突破したエコキュートのこれまでの軌跡を、日本冷凍空調工業会の関係者はこう振り返る。東日本大震災以降、一時的に出荷台数は落ち込んだものの、現在では再び震災前の水準となる年間70万台程度にまで持ち直している。エコキュートの普及は電力産業の発展に大きく貢献したが、その余波は他産業にも及んだ。

ガス業界は効率の低い旧式のガスボイラーを改め、省エネ性に優れたエコジョーズを業界標準として本格普及させる契機とした。また、ガス機器メーカーがルームエアコンの冷媒を使ったヒートポンプとガスボイラーを組み合わせたハイブリッド給湯器を市場投入するなど、熱利用を巡る技術進歩を促した意味で業界全体の活性化に貢献した。

更新需要に備え 自動運用へ規格化進む

「ニーズを把握するためにエンドユーザー向けに定期的にアンケートを実施しているが、毎回9割近くがその利用に満足している。今後はエコキュート同士への更新需要に備えていく必要がある」。前出の日冷工関係者はこう話す。ただ、ハイブリッドといった対抗設備が登場するなど、更新需要にあぐらをかいてはいられない。次なる普及策として、業界が進めているのがエコキュートのDR(デマンドレスポンス)活用への対応だ。

再生可能エネルギーの利用拡大に向け、昼間の太陽光発電(PV)の余剰電力の活用を促す上げDRのほか、下げDRなどエコキュートの蓄熱力を活用した電力系統の調整力に貢献させようとする取り組みだ。

実はこれまでも、ユーザー自らがキッチンのリモコンを使って、夜間に蓄熱していた時間帯を昼間に手動でシフトするDRの運用は可能だった。

また、一部の電力会社はエコキュートを使い再エネ推進に貢献するDRプランを提供してきた。例えば「おひさまエコキュート」プランだ。PVの自家消費を促すもので自ずとヒートポンプの稼働は昼間が中心となる。深夜から昼間へシフトさせる意味でDR運用の一種でもある。ユーザーにとって割安感を得られるが、PV設置住宅が前提で、天候の悪い日が続くと割安感が得られなくなる。

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