【特集2】 家庭用給湯が四半世紀で一変 低・脱炭素化担うアイテムへ

2025年10月3日

家庭部門の低炭素・脱炭素化の鍵を握るヒートポンプ。新たな役割を担うための仕組みづくりなどが始まっている。

2001年に誕生したエコキュート。それまではガス給湯が当たり前だったが、CO2を冷媒とした新しいタイプのヒートポンプによって家庭用給湯器市場は激変した。オール電化住宅の普及とともに出荷台数は年々増加。四半世紀近くを経た今年春には、累積出荷台数が1000万台を突破した。現在では年間70万台程度の出荷数で推移している。

高い省エネ性に着目 ハイブリッド型も登場

ヒートポンプの省エネ性を生かし、ガスボイラーと組み合わせた新しい発想のアイテムも登場した。ガス機器メーカーが開発、製造を主導するハイブリッド給湯器だ。高い省エネ性やランニングコストを削減できる点で注目されている。LPガス大手のニチガスが積極的に採用するほか、東京ガスが取り扱いを開始するなど、ガス業界が普及の担い手となることが期待されている。

片や欧州のイギリスに目を向けると、家庭用ヒートポンプを新しい手法で普及させる動きが出てきた。ウクライナ危機によって、ガスから電気転換への見直しが進み、ヒートポンプ機器を自ら販売する電力小売り事業者が登場したのだ。機器メーカーと生産委託契約を締結し、家庭に電気を供給するだけでなくヒートポンプ機器普及拡大の役割を果たしている。

日本で主流の給湯ではなく、温水暖房用途が中心で、CO2を冷媒とするヒートポンプではないため、単純に日本にとっての参考事例とはならない。だが、こうした家庭用機器を巡る「ファブレス経営」の手法が編み出されている視点に注目するべきだろう。

洋の東西を問わず家庭用市場のビジネスが大きく変わる中、給湯器や暖房機器に新たな役割が求められようとしている。脱炭素社会を実現するため、そしてそれをけん引する再生可能エネルギーの最大限の活用を見据えた「DR(デマンドレスポンス)運用」だ。

エコキュートメーカーは機器にあらかじめDR機能を備えた規格作りに着手している。ハイブリッド機器も、電気とガスを自在に切り替えることでDRに対応できる。

CO2削減や省エネに資する家庭用ヒートポンプの普及には、どのような道筋や課題があるのか。業界の最新動向とともに考察する。

大台を突破した