【特集2】分離膜方式採用のシステム開発 高濃度のメタンガス精製を実現
【東京ガスエンジニアリングソリューションズ】
鹿児島市南部清掃工場のメタンガス精製を担う中核システムをTGESが手掛けた。
メタンを分離する膜技術など長年にわたり開発したノウハウが結集する。
鹿児島市南部清掃工場のバイオガス製造を支えているのが、東京ガスエンジニアリングソリューションズ(TGES)が開発したバイオガスからCO2を分離する精製システムだ。
東京ガスグループはこれまで、バイオガスを使って今後のCN化につなげる技術を磨いてきた。2011年にはバイオガス由来の都市ガスを導管に注入した実績を持つ。バイオガスにはメタン以外にもCO2や硫化水素、シロキサンなどが含まれている。これらの不純物を取り除くことで、都市ガス原料に利用できるが、メタンの回収効率の向上が課題だった。そこで、東京ガスグループでは12年から精製システムの自社開発を進めてきた。
メタンとCO2の分離技術は、圧力でCO2を水に溶かしメタン回収する高圧水吸収法、固体吸着剤を利用し圧力の変動でCO2を吸着・脱着するPSA(圧力スイング吸着)法などが存在する。だが、圧力や流量の変動、メタン回収率の低さ、システム構築の複雑さといった課題があった。アミン溶液を使う方法もあるが、こちらは主に石油精製や発電所などの大規模用途で、今回のケースには適さない。
圧力・濃度の制御を最適化 バイオガス成分変化に対応
そこで東京ガスグループでは、分離膜方式に注目した。金属製の筒状の中に、小さな分子の結合体である高分子でできた膜の束を複数設置する。その中をバイオガスが通過すると、CO2は膜を透過して分離され、膜の出口からは都市ガスの原料として利用可能な98%以上の高濃度のメタンが回収される。透過したCO2も高い純度で分離できる。
TGESソリューション技術本部再エネ・脱炭素ソリューション技術部の西川研志さんは「欧米では実績のある技術。圧力や温度の最適な制御技術を磨くことで高濃度のメタン回収を実現した。バイオガスの成分は常に一定ではなく地域や季節で変わる。今回、南部清掃工場で採用されたシステムは、あらゆる変化に耐えられる。清掃工場でバイオガス由来のメタンを都市ガス原料に利用する国内初の事例」と話す。今後、東京ガスグループではメタン回収だけでなく、CO2の分離回収・利用などCN化へさらに研究開発を進める。

精製システムでCO2とメタンを分離する


