【コラム/12月18日】これがCOPの壊れ方 日本はいつまでしがみつくのか

2025年12月18日

杉山大志/キヤノングローバル戦略研究所研究主幹 

COP30(国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議)は、大した盛り上がりもなく終わった。交渉内容について詳しくは有馬純氏による解説に譲るとして、本稿では、いよいよ見えてきた「COPの壊れ方」に話を絞ろう。

先進国側は、出来もしない約束を二つもして、にっちもさっちもいかなくなった。すなわち、「2050年までにCO2をゼロにする」という約束をして、途上国にも押し付けようとするが、途上国は猛然と反発する。化石燃料については、今回の最終文書では言及することすらできなかった。もう一つの出来もしない約束は「年間3000億ドル(45兆円)の途上国への支援」である。これも出来るはずがないが、今回その相場は1兆3000億ドル(195兆円)以上にさらに膨らんだ。毎年COPを開催するたびにこの金額は膨らんでいく。もとより、先進国に支払うことができるはずもない。

この構図は、ここ2、3年何も変わらない。先進国は出来もしないことを約束し、途上国は排出削減目標の深掘りを拒否する一方で、先進国の責任を追求し、支援の金額を釣り上げ、それを拒否する先進国を批判する。

さらに、今年になり米国バイデン政権がいなくなったことで、欧州は単独で途上国と向き合うことになった。指導力があるフリをするためには、とにかく合意をしないといけないから、途上国の要求を丸呑みする形になった。

来年のCOP31はトルコが議長国となって開催され、再来年のCOP32はエチオピアで開催されるという。いずれの議長国も途上国の意見を尊重してまとめることになるだろう。先進国には居心地の悪い状態が続く。

COPは毎年同じ構図で続けられ、議題の選択も交渉成果の文書もますます途上国側が支配するようになる。こうなると先進国のリーダーは誰も行かなくなる。COPは形骸化していくだろう。

すでに年々、COPへ出席する首脳は減っている。今年は、米国はもとより中国、ロシア、インド、日本などの大国は大統領や首相を出席させなかった。英独仏などの首脳はCOPに出席したが、彼らはいずれも非常に支持率の低いレームダックの政権である。ウクライナでの敗戦が明らかになるにつれて、彼らの支持基盤はますます弱くなっている。ヨーロッパが政権交代して右傾化すれば、新しい指導者はCOPに行かなくなるだろう。

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