【特集2家庭用エネルギー】エネルギー史に刻むハイブリッド給湯の潜在力を探る
年間5万台に満たないが、普及へ大きな潜在力を秘めるハイブリッド給湯器。自由化政策によって誕生した家庭用総合エネルギー事業者による普及への一手は何か。
司会=角田憲司(エネルギー事業コンサルタント)
出席=清水靖博(日本瓦斯執行役員営業本部電力事業部長)
祖父江 務(リンナイ経営企画本部経営企画部部長)
角田 16年以上前になりますが、リンナイがエコジョーズとヒートポンプ(HP)を組み合わせた家庭用のハイブリッド給湯器「エコワン」を開発した話をお聞きした時、私は東京ガスの家庭用営業部門で商品企画に携わっていました。「効率の良い電気式HPと湯切れの心配がないガスボイラーを組み合わせることで、電気とガスそれぞれのメリットが生かせ、家庭のお客さまには良いコンセプトの製品だ」と思った記憶があります。ですがガス業界は大手ガス会社が中心となり、まずはエネファームの拡販に注力しました。
コロナ禍の時期にエネルギー事業コンサルタントになって以降、私は省エネ性やランニングコストメリットといったハイブリッド給湯器の価値を皆さまにお伝えしています。リンナイは業界に先駆けてハイブリッドを世にリリースしたわけですが、これまでの販売動向や現状について解説をお願いします。
祖父江 販売開始は2010年で、当初はLPガス業界向けの営業から始めました。オール電化の攻勢を受けLPガスの販売量が減る中、省エネに貢献し、ランニングコストを削減するエコワンがエンドユーザーに響くだろうと提案を始めました。ただ、ハイブリッド給湯器の単品販売だとガス販売量が減るだけです。そこで、当初目を付けたのが床暖房、そして最近ではガス衣類乾燥機です。給湯で減らした光熱費分のガスの力で快適な暮らしを支えることができます。そうしたガス商材をセットに訴求していきました。
次のステップは住宅業界のハウスメーカーや工務店向けです。住宅業界として省エネ住宅を進めていく中で、ハイブリッドの利点が認識され始めていて、主に新築向けに普及が進んでいます。最近では新築と既築で半々くらいの普及状況でしょうか。
これまで長い時間を経てきたわけですが、ようやく数年前に「年間1万台の壁」を突破しました。潮目が変わったのが国からの補助金の増額です。国がハイブリッドの省エネ性に着目後、23年の1台当たり5万円から始まり、24年には15万円の補助金が出るようになりました。国の「ハイブリッド給湯は省エネ機器だ」というお墨付きによって、直近では業界全体で年間4万台程度まで増えていると想定しており、本格的な普及への下地が整いつつある状況と認識しています。メーカーも昨秋にパロマが加わり、ノーリツと計3社体制となって、近い将来、認知度も上がることで、年間10万台単位の市場になると思っています。
100%を超える省エネ性 大規模な設置工事が不要
角田 政府が推進するGX(グリーントランスフォーメーション)に関して、当初、脱炭素社会の実現と産業競争力強化を目指す16の重点分野が設定され、その一つに「くらし(家庭・業務部門)」が設けられました。確かに経済産業省、環境省、国交省の連携による給湯省エネの補助事業が普及に向けた一つのトリガーになりましたね。さて、都市ガス向けの販売ルートはいかがでしょうか。
祖父江 エコジョーズ単体ではどんなに頑張っても省エネ効率が100%を超えません。しかしハイブリッドは違います。100%を優に超えます。さらに大掛かりな設置工事も不要で比較的コンパクトに簡易的に導入できます。最近では100Vの屋外コンセントにプラグインで設置できる機種もラインナップしています。また、スペースが限られる集合住宅の省エネ化にもハイブリッドは相性が良いです。
最近では都市ガス供給エリアの集合住宅向けに導入されるなど、都市ガス業界にも注目され始めていると理解しています。
角田 電力業界はエコキュートの普及を進めていますが、住宅構造上の制約でエコキュート導入が難しい物件があります。そうした物件にエコキュートよりも貯湯タンクが小さくてコンパクトな構造のハイブリッド給湯器を電力業界が導入していくシナリオは考えられますか。
清水 18年まで東京電力にいた私がお答えします(笑)。東電時代、ハイブリッド給湯器の省エネ性について議論しました。原子力発電がフル稼働で深夜電力に経済性があればエコキュートに優位性があるかと思いますが、そうでないならば、深夜の電気を使って無理に400ℓタンクに貯湯する必要はない。貯湯のための断熱性能維持といったハード面でのコストもかかります。使うタイミングで必要な量のお湯を作り、貯湯量を少なくできるハイブリッドの方が合理的ではないかと個人的には思います。
ただ、現状の電力業界内では住宅の屋根に設置した太陽光発電(PV)を使ってエコキュートとの親和性を発揮させる「おひさまエコキュート」に取り組まれているケースが多いと思います。昼間に余ったPVの電気を使ってエコキュートを稼働しお湯をためる。意図的に電力消費を促す「上げDR(デマンドレスポンス)」です。すでに昨年累積1000万台を突破したエコキュートを有効活用したいと考えていると思います。
同時に停電に弱い、レジリエンスに弱いといったオール電化の弱点をPVと蓄電池によってカバーすることで、災害にも強いオール電化住宅に仕立てていくことが大手電力会社のファーストチョイスだと思います。

省エネ性を発揮する「エコワン」
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