【フォーラムアイ】ビジョンの実現加速を狙い中国電力がDX戦略に本腰

2026年2月6日

【中国電力ネットワーク】

中国電力ネットワークがDX戦略を策定し、その実装に動き始めた。

全社員が能動的にDXに取り組むよう促し、業務プロセスの変革と新たな価値創出を目指す。

デジタル技術の急速な進展により、DXの推進は企業にとっての必須課題といえる。そんな中、中国電力ネットワークはDX推進を重要な経営課題の一つと位置付け、「業務プロセスの変革」と「新たな価値の創造」を柱としたDX戦略を昨年5月に策定した。これにより、「経営ビジョン2030」で掲げる、①送配電事業の強化、②新規事業の展開、③地域活性化への貢献―の実現を加速させる狙いだ。また、経済産業省がDX推進の準備を整えている企業を認定する制度「DX認定」を同年8月に取得した。

ネットワーク設備部技術高度化グループの寺迫弘晃マネージャーは「電気の重要性が一層高まる中、送配電事業者としては低廉な託送料金と安定供給が引き続きの使命。しかし、働き手の確保が社会的にも課題である中、DXの推進なしには会社が衰退するという危機感を持ちつつ、戦略が奏功すれば明るい未来が開けるという形を示したい」と意気込む。

2030年に向けたDX戦略のロードマップ


プロセスを大胆に見直し 社内外のデータ連携を加速

2本柱のうち「業務プロセスの変革」では、デジタル技術の活用により、従来行ってきた業務の生産性向上を図るとともに、社員の思考や行動様式を見直し、抜本的に変革する。

具体的には、まず送配電設備の保守・管理の変革が待ったなしだ。同社は、鉄塔約2万基、変電所約500カ所、電柱約180万本と膨大な設備を管理している。人力に頼らなくてよい作業は極力デジタル技術に代替することが求められている。

例えば、これまで人が現場に赴いて巡視していたところをカメラによる監視に切り替え、人が点検する頻度を減らし、効率化を追求する。

これまで一部業務において使用していたドローンも本格的に実装していく。山奥の設備の巡視には徒歩で1日かかる場所もあり、今後は麓からドローンを自動飛行させるような方法を考えている。飛行距離の制約などの課題については引き続き検討を進める。

ドローンによる鉄塔点検

さらにAIの活用も順次拡大する。設備のさびなどの検知、鳥の巣の有無や、樹木と電線の距離が適切かといった判定などを行えるよう、AIに学習させていく。AIの活用は、判定の均一化にもつながる。生成AIや、目標に対し能動的にタスクを遂行するAIエージェントなども駆使し、業務に応じてツールを使い分けていく方針だ。

こうした対応で生まれるリソースを「新たな価値の創造」につなげていく。社内外のさまざまなデータを掛け合わせ、既存サービスの価値向上や新たなサービスの提供などを図っていく。

同社は送配電設備やスマートメーター、需給状況など、さまざまなデータを有する。これまでは部署内で業務ごとにデータを活用する程度にとどまっていたが、今後はプラットフォーム上に全データをインプット。データの連携・分析を進め、部署横断での活用に発展させる。

自社のデータ同士、あるいは気象データやハザードマップなど外部データとも組み合わせることで、顧客のニーズを踏まえた新たなサービスを提案する考えだ。また、可能な範囲で外部へのデータ提供も検討する。スマートメーターのデータを活用した一人暮らしの高齢者の見守りや、再配達が社会的な課題となる運送業の効率化など、アイデア次第でより斬新なサービスにつながる可能性を秘める。


組織風土の醸成に注力 全社員が自分ごとに

先述のプロセス変革や価値創造の例はあくまでごく一部。戦略のターゲットイヤーである2030年度に向け、スピード感と柔軟さを意識して展開していく考えだ。

同戦略の実現には、①DX人材の育成・確保、②デジタル基盤の整備、③DX推進体制の構築―が必須だ。その入り口として、全社員のリテラシーの引き上げが重要となる。「あらゆる年代層のマインドを上げていかなければならない。苦手意識のある人は、ともすれば『人力でできる作業の手順をなぜ変えなければならないのか』という考えに陥りがち。そうならないよう、どの社員も楽しんで変革に取り組めるような組織風土の醸成に注力している」と寺迫氏。「チャレンジを推奨し失敗も次の成功の元に、そして全社員がDXを自分ごとに」といった思いで働きかけているという。

DXの推進には大胆な投資が必要な場面もあろうが、レベニューキャップ制度の枠内で取り組まなければならないという難しさもある。必要な投資は行いつつ、他社との協働などで乗り越えていく構えだ。