【時流潮流/2月3日】騒擾の海にあるイランと米国 近づく「戦争」の足音
イランを巡る緊張が高まっている。米国は、空母「エイブラハム・リンカーン」を中心とした海軍部隊や、戦闘機などの空軍部隊を中東地域に展開させ、いつでも攻撃できる態勢を築いている。一方、イランの最高指導者ハメネイ師は「戦争になれば地域戦争に発展する」とけん制する。ただ、双方とも妥協の余地はなく、戦争の足音が近づいている。

イランは昨年末以降、騒擾(そうじょう)の海の中にある。通貨イラン・リヤルが大暴落、欧米からの厳しい経済制裁なども重なり、物価は1カ月前より60%も上昇する狂乱状態にある。不満を募らせた国民は、12月下旬から首都テヘランをはじめ全土で抗議活動を始めた。
デモは年明け以後、急速に激化し政府機関や金融機関などが襲われた。鎮圧のため治安部隊が発砲、多数の死傷者が出た。当局発表の死者数は3117人だが、実際ははるかに上回るとの観測が広がる。1月中旬以後は、デモは沈静化している。
イラン当局は、イスラエルの情報機関モサドや、米中央情報局(CIA)などの外国勢力が暴動を先導、武器も配布したと非難する。犠牲者には、イラン当局が「テロリスト」と呼ぶ約700人も含まれる。
外国スパイの関与説は、政権側の「言い訳」とも聞こえるが、取材に応じた専門家は「一定程度は現実だろう」と指摘する。昨年6月にあったイランとイスラエル、米国の「12日戦争」の際にも、イスラエルなど多数の外国情報機関員が事前にイラン国内に潜入して準備を重ね、ドローンなどで軍高官を根こそぎ殺害した「実績」もあるからだ。
混乱に乗じ、大幅譲歩をイランから引き出そうと圧力を強めるのがトランプ米政権だ。トランプ氏は昨年末、米南部フロリダでイスラエルのネタニヤフ首相と会談、弾道ミサイル増強や、核活動再開などの動きがあれば、イランを再攻撃する考えで一致、イランに「次の攻撃はもっとひどいものになる」との警告を続ける。
サウジやUAEが自制求めるも歩み寄りは困難か
米軍が攻撃に踏み切るタイミングはまだ見通せていない。攻撃を受ければ、イランが中東諸国に置く米軍基地などを報復攻撃するのは確実で、地域全体が大混乱に陥る事態も予想される。そうした事態を避けようと、サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)は「イラン攻撃にわが国の領空や領海は使わせない」と、米国に強く自制を求めている。
さらに、サウジアラビアやエジプト、トルコなど中東主要国は、米国とイランの直接交渉をお膳立てするための外交努力も続ける。ただ、仮にこうした努力が実を結び、交渉が実現した場合でも、事態の好転は見込めそうもない。米国とイラン両国の主張はこれまでも大きくすれ違ってきた歴史があるからだ。
米政権は、核兵器開発につながるウラン濃縮の完全停止や、イランが保有する弾道ミサイルの総量や飛距離に上限に設けることなどを求めている。一方、イランはこうした要求に応じる考えはないとの主張を続ける。双方が歩み寄り、妥協点を見いだすことは極めて難しい状況にある。私が取材した専門家の中からは「時期は見通せないが、米軍のイラン攻撃は必ず年内にある」と指摘する声も上がる。
中東全体を巻き込む戦争になれば、中東地域に石油・天然ガスの供給を頼る日本にとっても一大事となる。心して準備する必要がありそうだ。


