【特集2 ガス転換の潜在力】企業は将来のガス活用に懸念 制度的担保の提示が不可欠

2026年11月3日

政府は、GXの推進を成長戦略の柱に据えている。
脱炭素化と産業継続両立への具体的な道筋を聞いた。

インタビュー/橘川武郎(国際大学学長)

―「POWERR GX」など政府の成長戦略やGX方針をどう評価しますか?


橘川 国の成長戦略は一見拡大したように見えますが、GX分野への実質的な支援規模は縮小しています。また、ペロブスカイト太陽電池や水素・アンモニアなど10年以上先の技術開発への支援に偏重しており、足元10年間の具体的な施策が抜け落ちています。その結果、熱分野における天然ガスなどへの燃料転換が現実的に最もCO2削減効果を発揮できるGXの「切り札」として浮上しました。


―燃転を進める上での課題は。


橘川 ユーザーである企業の不安が解消されることが重要です。企業は、コストをかけて燃転しても、将来「脱炭素にならない」として再投資を迫られるのではないかと不安を抱いています。追加投資することなくバイオメタンやe-メタン利用につなげ、シームレスに脱炭素へ移行できる明確な将来像と制度的担保を、政府とガス業界が提示するべきです。

価格のボラティリティ抑制へ 備蓄体制強化が急務

―この局面でのLNG価格高騰は、その逆風になりかねません。


橘川 地政学リスクに伴う燃料費高騰は燃転の障害になります。だからこそ、天然ガスの備蓄体制の強化が急務だと考えています。「天然ガスはボイルオフ(蒸発ガス)が生じるため液体のまま長期備蓄できない」と説明されがちですが、欧州のように気体での地下貯蔵を国家レベルで真剣に検討すればよいのです。備蓄による価格安定化が実現できれば、企業の燃転を後押しする強い力になります。


―バイオメタンへの取り組みを積極化する動きもあります。


橘川 2030年の非化石ガス導入目標に向けて、e-メタンのみならずバイオメタンの活用が重要です。国内にはごみ処理場約1000カ所と下水処理場約2000カ所があり、大きな潜在力があります。従来はFIT(固定価格買い取り)制度による発電利用が主流でしたが、エネルギー効率の観点からはガス体での直接利用が優れています。地方都市の処理場と需要家を結ぶ導管接続への補助など、現場のインフラ整備支援を具体化するべきです。


―どのような取り組みが必要ですか。


橘川 政府が40年に大幅なCO2削減を掲げる以上、国内産業を閉鎖して数字を達成するのではなく事業を続けながら排出を減らす道筋が重要です。これを実現できる制度の整備が不可欠でしょう。

きつかわ・たけお 1975年東京大学経済学部卒、東大大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。経済学博士。東京大学・一橋大学・東京理科大学教授、国際大学学長。