【特集2 ガス転換の潜在力】段ボール原紙工場で石炭利用ゼロに CN化も意識したDaigasエナジーの提案

2026年11月3日

 国内最大手段ボールメーカーのレンゴーグループは、中期目標「エコチャレンジ2030」に基づき、27年度までに国内製造拠点で石炭使用ゼロを目指す。段ボール原紙の製造は蒸気・電力需要が大きいため、同社西日本の主要拠点である金津工場(福井県あわら市)では長く石炭依存が続いてきたが、Daigasエナジーの提案を受け、LNGへの燃料転換を完了させた。年間約12万tものCO2削減を見込む。レンゴーグループはカーボンニュートラル(CN)への歩みを着実に進めている。
 金津工場は24時間稼働し、1日に約1000tの段ボール原紙を製造。電力負荷は約1・5万kW、蒸気負荷は1時間当たり45tに上る。以前は石炭ボイラーで蒸気を発生させタービンを回して発電していたが、CO2削減のため、燃料転換と設備更新に踏み切った。製造プロセスの中では、紙を乾燥させるための200℃の蒸気と設備稼働用の電力が24時間安定的に必要となるため、ガスコージェネレーションシステム(CGS)が最適なソリューションとなった。
 天然ガス利用を進めるに当たり、都市ガス導管が敷設されていないエリアのためLNGサテライト設備を導入した。タンク容量は1400㎘と需要家では国内最大規模で、約5日分の燃料を貯蔵できる。一連の工事は24年3月に着手し、昨年末に総合試運転を終え竣工。今年1月から新設備が稼働している。
 レンゴーの小林勝理事・金津工場長は「22年のウクライナ侵攻発生前はロシア産石炭を使っていたが、人道的観点からすぐに使用停止を意思決定した。また、気候変動対応の必要性や石炭価格の高騰も、LNG転換のスピードアップを後押しした。そうした中Daigasエナジーから、現在のプロセスに見合った最適な設備仕様を迅速に提案してもらった」と振り返る。

導入したサテライト設備。タンク容量は需要家では国内最大規模

高い省エネ性を実現 レジリエンスも強化

 過去の生産規模縮小に伴い、従来の設備はスペックが過剰気味で、余剰電力の売電も行っていた。今回、工場内の電力・蒸気負荷の分析を行い最適な設備構成を導き、ガスタービン(7550kW×2台)、ガスエンジン(5000kW×1台)、追だき付排熱ボイラー(1時間当たり35t×2台)などを導入。Daigasエナジーは「ベース稼働用のガスタービンと機動性の高いガスエンジンを組み合わせることで、通常操業時の高い省エネ性を確保しつつ、お客さまが希望する『災害時にも工場全体へ給電可能なシステム』を実現できる機器選定を行った」(冨田達也・ビジネス開発部部長)と説明する。現在では売電せず、近隣工場への自己託送を行っている。
 設備構成の特徴は大きく四つ。まず、排熱と冷熱の有効活用だ。LNGの気化に必要な熱は、ガスタービン・エンジンから発生する排熱で全て賄っている。さらに、LNGの気化時に生じる冷熱をガスタービンの燃焼用空気の冷却に利用することで、外部熱源を使用せずに熱と冷熱を有効活用している。
 2点目がLNG高圧送液による補機電力の削減。ガスタービンへの燃料供給に関して、一般的なガスの圧縮方式ではなく、液体状態で昇圧するLNGポンプを採用した。これで昇圧用の電力を約420kWから約30 kWに低減させた。
 3点目がレジリエンスの強化で、ブラックアウトスタート可能な設備仕様を採用した。商用停電時でも非常用発電機で初期給電し、ガスタービンの起動が可能となる。北陸は雷による停電が多く、対策を厚くした。
 そして、将来的な脱炭素化対応も可能となるよう、主要設備はe―メタンなどの導入を見据えたシステム構造とした。
大幅な設備更新となったが、生産工程への影響はなく、むしろ石炭よりガスの方が品質面の安定性などから管理しやすい。石炭を使う際は1班当たり2人が運転管理に当たっていたが、ガスでは1人で済むという。
 ただ、石炭は相対的には安価なため、エネルギーコストは上昇。設備投資も90億円超かかった。それでもレンゴーは、「段ボールを使う大手企業はCO2削減の取り組みを重視するケースが多い。段ボール業界におけるCO2削減の取り組みを、日本のリーディングカンパニーとして示すことを決断した」(小林氏)と強調。さらなるCN化についても「関東の工場ではバイオマス燃料の活用を広げている。グループ全体のCN化に向け、LNGという現実解に加え、将来像についても追い求めていく」と意欲的だ。

エネルギー負荷を分析し最適な設備設計を提案した

産業分野の現実的選択肢 需要家の引き合い強く

 Daigasエナジーは全国各地で、都市ガス導管がない地域の燃料転換を担ってきた。最近の実績としては本件の他、レンゴーグループの丸三製紙(福島県南相馬市)でもLNG転換のための設備工事を受注し、12月に竣工予定だ。これで同グループの石炭使用はゼロになる。
 また、セメントの大規模燃料転換実証など、ソリューションの幅も広がっている。「(既存技術でのエネルギー転換が困難な)ハード・トゥ・アベイト産業のシームレスなCNの選択肢はLNG転換。将来e―メタンを導入する際に必要なインフラや利用機器が整備され、徐々にe―メタンの比率を増やし、事業環境の変化に柔軟に対応できる」(冨田氏)と説明。需要家から多数の引き合いがあり、補助金を活用した石炭自家発設備の転換などに全国大で取り組む。
 今年始まったGX―ETS(排出量取引制度)では、CO2直接排出量が10万t以上の企業の参加が義務付けられている。産業分野のCNの現実解として、ガスインフラが未整備な地域も含め、ソリューション提供の重要性が一層増している。