【特集2 ガス転換の潜在力】導管延長を機に都市ガス化 水素導入見据えた技術支援も担う東邦ガス

2026年11月3日

 愛知、岐阜、三重の3県で熱需要のある顧客をターゲットに、都市ガスへの燃料転換を進めている東邦ガス。エリア内の需要家は自動車業界などを中心に環境意識が高く、設備更新のタイミングで都市ガスを検討するケースは多い。最近は中東情勢悪化による燃料供給不安の高まりから、都市ガスの供給安定性が再認識されている。こうした動きも追い風に、燃転に伴って需要家が直面する課題にもきめ細やかなサポートを行っている。
 大和ハウス工業の三重工場では、建築資材用の乾燥炉の燃料としてLPガスを使用していたが、設備更新時期を前に2019年頃から都市ガスへの燃転の検討を始めた。23年3月に工場前面の道路にガス導管が埋設されたことを機に、5年越しでようやく都市ガスへの燃転が実現した。
 近隣まで導管が整備されていない場合、需要家負担で導管を敷くのはコスト面で見てもなかなか現実的ではない。東邦ガスエナジーエンジニアリング産業エネルギー営業第二部の竹内慶太氏によると、導管がないことを理由に都市ガスへの燃転に難色を示す需要家に対しては、重油などを使用している場合、まずはLPガスへの燃転を提案するという。グループ会社である東邦液化ガスと連携し、「つなぎ」としてガス化を進めつつ、導管が近隣に届いた段階で再度都市ガスを提案することもあるそうだ。

設備更新で導入された大型乾燥炉

技術部門も積極的に助言 熱源変更に伴う不安解消へ

 また需要家の中には、都市ガス利用に関心があるものの、熱源が変わることに伴う製品の品質への影響を懸念して、燃転に二の足を踏むケースも。例えば、窯業などの焼成の工程で燃焼条件や炉内雰囲気成分などの条件がわずかでも異なると、製品の仕上がりの色味や質感などが変わってしまうのではないかといった不安を口にする需要家も少なくないそうだ。そうしたケースには技術部門と連携し、燃焼条件の事前確認や燃転後の燃焼調整、試験炉を用いた製品テストなども実施しながら、製品が従来通りの品質を維持できるよう支援している。

導管敷設を契機に燃転に至るケースも
同社技術研究所内にある水素試験場

水素利用のノウハウも活用 他社に先んじた強みを発揮

 今回、三重工場が乾燥炉に新設したバーナーは、都市ガスと水素の双方に対応できる仕様で、当面は都市ガス専焼で使用し、将来的には水素混焼・専焼への切り替えも見据えているという。今回は設備導入時の試運転として一時的に水素燃焼の状態を確認する必要があった。水素の製造・供給や関連技術の開発を進めてきた東邦ガスにとっては、まさに得意分野だ。設置に当たっては、東邦ガス技術研究所で蓄積した水素エンジニアリングのノウハウも活用。三重工場が水素を取り扱うのは初めての経験とあって、水素試験の実施はもちろん、配管設計や水素試験方法の立案などにも協力した。「燃転事例において都市ガス化にとどまらず水素利用の部分までサポートでき、当社の強みを生かせる良い機会だった」と竹内氏。
 バーナーは、水素専焼で1時間当たり約600N㎥と、東邦ガスが水素試験を手掛けてきた中で過去最大の容量だった。一連の水素試験のプロセスを通じて、営業サイドも水素案件の知見が蓄積されるなど、収穫も大きかったようだ。
 製造業のサプライチェーン全体を見渡せば、カーボンニュートラル(CN)対応に課題を感じつつも、取り組みを進められていない小規模事業者は少なくない。燃転提案によって小規模事業者のCNへの機運を高める役割も負っているという竹内氏。現状の作業工程の聞き取りなどから始め、どの設備を入れ替える必要があるのか、コスト面、工事期間も含め燃転に必要なプロセスを詳細に説明するそうだ。
また、ボイラーや空調の都市ガス化に当たっては、初期投資を抑えるために機器調達や工事、メンテナンスに至るまでを一体的に行うエネルギーサービスとして請け負うなど、柔軟な提案を行っている。
 竹内氏は「燃転はあくまで、需要家が抱える課題解決の手段の一つに過ぎないと思っている。CNを目指す上で私たちはこの先、エネルギーに関するコンサルティングの役割を担っていかなくてはいけない。CNに資するような省エネ全般の提案など、都市ガスにこだわらず需要家のニーズに応じて全面的にバックアップしていきたい」と話した。

燃転事例について話す竹内氏