【特集2 ガス転換の潜在力】LNGとLPガスの二刀流の岩谷産業 多様なニーズに応える供給力
LPガスの販売特約店組織「マルヰ会」を組織するほか産業向けのLPガス販売から施工・メンテナンスまで対応し、全国規模の供給網を持つ岩谷産業。LPガスのみならず、大手電力会社と連携したLNG販売による燃料転換にも注力している。「大手電力会社がLNG供給拠点となる基地を全国に整備してきたことでローリーでの広域供給が可能になった」。総合エネルギー本部の浅井健治産業エネルギー部長はこう話す。
熱量当たりのCO2削減量はLNGの方が多いが、LPガス、LNGともに環境性に優れている。浅井氏によると、輸入価格の差はほとんどなくなっており、ランニングコストはほぼ変わらなくなっているそうだ。
LNGは極低温という特殊なエネルギーであることから、需要家側の受け入れ設備がどうしても割高になる。ガス使用量が多く、より多くのCO2削減を希望する企業にとっては、LNGのほうがニーズに合致する。一方、ガスの使用量がそれほど多くなく、設備投資を抑えたいケースにはLPガスが最適だ。同社は、それぞれの顧客ニーズに合わせて提案を行っている。
そんな二刀流で燃転を進める岩谷産業だが、今年3月に起きた中東危機によって、従来の環境対策としてのCO2削減とは異なる要望も増えている。「『A重油が手に入らなくなった。とにかく急いで代替のエネルギーが欲しい』との声が増えてきた」(浅井氏)切迫したニーズを踏まえ、同社では中東依存度の低いLPガス調達の利点を顧客に伝え、エネルギー安全保障の観点からも燃転を進めている。比較的短い納期で整備できるLPガスへの引き合いは例年よりも増え、各地で対応しているそうだ。

設備まで含めた一体提案 将来のエネサービス視野に
二刀流に加えて同社が強みとするのが、エネルギー供給に限らない、設備回りを含めた一体的な提案だ。蒸気や温水を供給するユーティリティー設備の選定から設置までのトータルソリューションで対応する。補助金利用の知識も含め、長年培ってきたノウハウを社内で共有し、全国規模での展開も強みだ。
「最近は人手不足のため、設備管理をアウトソースしたいというニーズも増えている。将来的には、当社がお客さま側の設備を保有し、長期間にわたって設備運用を担う『エネルギーサービス』の事業に向けた仕組みづくりを進めている。既に同様の事業を展開している他のエネルギーサービス会社の取り組みにも注目している」(浅井氏)
さまざまな営業を展開する上で、浅井氏が課題として挙げるのが、産業用・家庭用を含めた輸送や配送の問題だ。岩谷グループでは、家庭用はホームエネルギー、産業用は岩谷物流が主にその役割を担うが、その人材の確保が大きな課題だという。
「当社は元売りから小売りまで一気通貫で、自社による責任ある安定供給をモットーとしている。人材を維持しながら、しっかりとお客さまにエネルギーを届けたい」と浅井氏は使命感をにじませる。


