【特集2 ガス転換の潜在力】1500㎞の高圧導管を活用 産業分野のCO2削減へINPEXの貢献
海外でのLNG開発から生産・出荷、国内での導管を通じたガス供給まで全体インフラを構築し、安定供給を支えるINPEX。これまで関東・甲信越で約1500㎞の高圧導管を整備し、運用している。この国内インフラを通じ、同社が20年以上にわたってガスへの燃料転換の実績を重ねてきたことは、あまり知られていない。事業の主軸は、あくまで地域の都市ガス会社への卸供給だが、燃転による小売り供給にも取り組んでいるのだ。
「当社は石油・天然ガス開発を国内で手掛ける帝国石油と、海外で手掛ける国際石油開発の2社が経営統合した企業。前身の帝国石油が、お客さま側の設備更新のタイミングで提案することを基本に、導管沿線で燃転を進めてきた」。供給・営業本部南関東広域営業グループの河村和宏マネージャーは、その歴史をこう振り返る。
北信越広域営業グループの小出琢也マネージャーは、「燃転実績は10数件と少ないが、供給先はCO2削減に対する環境意識の高い食品工場や化学工場など大規模な工場が中心だ。高圧導管を通じた供給であるため、1件当たりの供給量は膨大。今後も燃転しそうなお客さまの候補は存在する」と、潜在需要の大きさを説明する。
同社による燃転の特長は、高圧導管を活用している点だ。中圧管を使って大口需要家に供給する場合、昇圧用コンプレッサーなどの付帯設備を必要とするケースがある。だが、高圧導管を利用する場合、状況次第ではこうした設備が不要となり、昇圧に伴う電気代がかからないといったメリットがある。

導管未整備エリアにも供給 他社基地からLNGを購入
同社は今年、ローリー供給という新方式による燃転を実現した。事例の一つが、福井県内の大口需要家への供給だ。同社の導管が未整備のエリアだったため、これを契機にローリーを保有して供給することになった。
同社は新潟県上越市の直江津港でLNG受け入れ基地を運用しているが、ローリーの出荷設備がない。そのため、他社の基地から小売り用のLNGを購入して、需要家に供給する仕組みを構築した。ローリーによる供給では、需要家側にLNGサテライトタンクを新たに設置する必要がある。一方で、導管による供給の場合、需要先まで導管を敷設するコストが発生する。同社は、今後も既存のインフラの状況を踏まえ、需要家にとって最適な転換方法を提案していく方針だ。
だが、課題もある。CO2削減に資する機器などへの導入補助制度は整備されているが、導管整備への補助は整備されておらず、導管の整備費用が需要家負担となってしまうことだ。「この状況が少しでも改善され、後押ししてもらえるとありがたい」。河村氏と小出氏は口をそろえる。
業界が描く将来の「メタネーションビジョン」では、既存インフラの有効活用が最大の強みとなる。同社は、充実した導管整備によってカーボンニュートラルに向けた取り組みを進めていく構えだ。


