エネルギーシステムの最適解 東京ガスグループの技術を結集

2021年1月1日

松本真由美(東京大学 教養学部 環境エネルギー科学 特別部門 客員准教授)

菱沼祐一(東京ガスエンジニアリングソリューションズ 常務執行役員 エンジニアリング本部副本部長)

国内最大規模の内陸型工業団地として知られている栃木県宇都宮市にある清原工業団地。この地でTGESがスマートエネルギーネットワークを運開してから1年近くが経過した。東京大学の松本真由美・客員准教授が現地を訪ね、TGES幹部と対談を行った。

松本 大規模なコージェネ設備、電力自営線や数㎞に及ぶ長距離の熱導管が敷地内、あるいは公道をまたいで整備されている様子など、今回のスマエネはスケールがダイナミックです。

菱沼 松本先生には以前、東京ガスの東京・田町のスマエネもご覧になっていただきましたが、田町は1000kWのコージェネが5台です。今回は5770kWのコージェネが6台で、当社としても最大規模のスケールです。今回のエネルギー設備の特徴は、大型コージェネとボイラーにより、皆さまが使う熱と電気のほぼ全量を供給できるだけの設備構成となっていることです(図参照)。

松本 あまりに大きな規模なので、今回のプロジェクトでは大変な苦労があったかと思います。まずは経緯を聞かせてください。

菱沼 大きなきっかけは、間もなく10年になる2011年3月の東日本大震災でした。盤石なエネルギー供給の基盤をつくり、省エネやCO2削減という社会的なニーズを踏まえ、地元・栃木県が独自にエネルギー戦略を打ち立てました。工業団地の価値を高め、着実に地元で事業を進める環境をサポートしようと栃木県が取り組む一方、コージェネを核とした分散型エネルギーシステムを構築していこうというわれわれの方向性が合致しました。14年頃のことで、5年以上の歳月をかけてようやく運開までこぎつけました。

松本 スマエネはエネルギーの供給側の取り組みだけでなく、需要側を巻き込んだ「需給一体型」の取り組みです。今回、カルビー、キヤノン、久光製薬の計3社の需要家の皆さんへエネルギーを供給しているわけですが、この3社からの協力も欠かせなかったのではないですか。

菱沼 おっしゃる通り、3社のご理解がなければ今回のスキームは実現しません。3社に代表される大口需要家の皆さまにとって、省エネ法の中で毎年1%ずつ省エネを進める努力義務があるわけですが、雑巾を絞りきった中での取り組みには限界があります。そうした中で、今回のような需要群をまとめて一括供給するスマエネでは、従来のように需要家単独で取り組むシステムに比べて、一気に2割もの省エネとCO2削減がかないます。

松本 そんなに削減できるものですか。

菱沼 そうなんです。ですので、今回のスキームに参画する意義も大きく、需要家の皆さまには実現に当たって大変多くのご協力をいただくことができました。

松本真由美 客員准教授

菱沼祐一 常務執行役員兼エンジニアリング本部副本部長

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