【特集2】水素・アンモニア・AIの三本柱 三菱重工グループで脱炭素に対応

2021年2月3日

レポート/三菱パワー

河相健・三菱パワー社長

三菱重工業は昨年10月の2050年カーボンニュートラル(CN)宣言を受け、11月に「エナジートランジション説明会」を開催。「火力発電設備の脱炭素化と原子力によるCO2削減が、CNにつながる第一歩だ」と語った。

三菱パワーは、これまで世界中の火力発電事業を支えると同時に、次世代型のガスタービンであるJAC形やIGCC(石炭ガス化複合発電)の開発を行うことで火力発電の高効率化を実現してきた。CN宣言に向け、どう取り組んでいくのだろうか。

同社の河相健社長は「水素・アンモニアなどの燃料の導入のほか、ICTにより火力発電のフレキシブル運転性能を改善させた。そうすることで、再生可能エネルギーの増加による電力系統の不安定化問題を解消できます。エネルギーの脱炭素化と安定供給の両方に貢献していきたい」と説明する。

火力発電所のゼロエミッション化に向けた取り組みについては、「既に水素ガスタービンでは18年に30vol%の水素混焼を達成しており、政府目標の25年水素専焼実現に向け技術開発を進めています。また既設のLNG焚き発電設備に対して最小限の改造で水素焚きに転換することで、投資コストを抑制し大規模な水素需要を喚起することも可能です」と話す。

また、石炭火力の脱炭素技術としてアンモニアが期待されている。

河相社長は「国内で水素社会を実現するにはキャリアーとしてのアンモニアの活用も有効で、ガスタービンの排熱を利用してアンモニアから水素を分離する技術を開発しています。またアンモニアは石炭焚きボイラーでの混焼も可能なので、石炭火力の脱炭素化に向けた活用も期待されています」と話しており、今後も研究開発を加速させていく構えだ。

デジタル技術でも脱炭素 三菱重工グループで連携

これら水素・アンモニア以外にも、河相社長が注目するのが「AI」だ。

「火力発電の脱炭素化にはAIも有用です。当社のICTにより、発電設備は再エネ利用時のグリッド負荷変動に俊敏に対応できる調整力を備えることで、再エネの弱点を補えます。さらに、蓄電池システムと組み合わせることで、システム全体の最適運転を実現する制御装置も事業化しています」と期待を寄せる。

こうした火力発電所由来のCO2を減らす取り組みと並行して、CO2を分離・回収し貯蔵するCCSや、CO2を再利用するCCUSの研究が全国各地で進められている。

「三菱重工グループはCCUS技術も有しているので、当社の技術を組み合わせることもできます。当社は総合エネルギーソリューションカンパニーとして、引き続きお客様の期待に応え、サステナブルな未来に貢献していきます」と展望を語っており、脱炭素社会実現に向けまい進する。