【特集2】バイオマス発電所でCCS 「カーボンネガティブ」を実現

2021年2月3日

レポート/東芝エネルギーシステムズほか

 成長過程で大気中のCO2を吸収する植物などを燃料に使うため、カーボンニュートラルな電源であるバイオマス発電。しかし発電する際にどうしてもCO2を排出してしまう欠点を抱えているが、この時に発生するCO2も回収し、CO2排出量をマイナスにする実証研究が福岡県大牟田市で本格的に動き出した。

 東芝エネルギーシステムズは2020年10月、グループ会社が運営する三川発電所(バイオマス)で、CO2を分離・回収する大規模実証設備を稼働させたと発表した。本実証は環境省が行う「環境配慮型CCS実証事業」に含まれている事業。発電所から1日に排出される約1000tのCO2のうち、半分に当たる日量500t以上もの分離・回収を予定している。

 参加企業は同社に加えて、みずほ情報総研、千代田化工建設、日揮、三菱マテリアル、大成建設、電力中央研究所、国際石油開発帝石(INPEX)など18法人が参加している巨大プロジェクトだ。

世界初の大規模BECCS カーボンネガティブを実現

 本実証は世界初となるバイオマス発電所での大規模実証設備の事例であると同時に、CO2の分離・回収、圧縮、輸送、貯蔵といったCCSで行われる一連のプロセス全体が本実証で行われるのが大きな特徴。その中で同社は代表事業者としてCO2の分離・回収部分を担当し、みずほ情報総研をはじめとする18法人で、CCSが実際の現場に導入するにはどのような手法が適切なのかをとりまとめを行う。

 CO2の分離・回収には、液体のアミンにCO2を吸収させる「化学吸収法」を使用。アミン吸収液は低温でCO2を吸収して高温でCO2を放出するという特徴を有していることから、排煙からCO2のみを分離し、回収する構成となっている。

 菅義偉首相の所信表明演説で50年までにカーボンニュートラルを実現するという宣言もあったことで、発電所などでのCO2分離・回収のニーズはさらに高まると予想される。また同社は実証が行われる前の09年から、三川発電所でCO2の分離・回収を行うパイロットプラントを建設し、日量10t規模のCO2分離・回収実証を行ってきた。豊富な知見を有しているのも大きな強みだろう。

 同社パワーシステム技術・開発部CO2分離回収開発・拡販グループの岩浅清彦マネジャーは「CO2の排出量がマイナスになるカーボンネガティブを実現するCCS付きのバイオマス発電所『BECCS』の需要は、今後ますます高まっていきます。すでに他のバイオマス発電所からも、今回の技術について引き合いの声も届いています」とアピールする。

 また、今後の展望について「将来的にJ-クレジットのようなCO2の排出量取引がより活発化すれば、カーボンネガティブを達成できるBECCSは大きなビジネスチャンスになります」と岩浅マネージャーは期待を寄せる。東芝エネルギーシステムズらの研究が、エネルギー業界に新たなビジネスを呼び込みそうだ。

※記事に誤りがあり、2月9日に訂正いたしました。

発電所に併設されたCO2分離・回収実証設備