【特集2】国内でのCO2処理を追求 30万tの圧入に成功

2021年2月3日

レポート/日本CCS調査

CCS・CCUSで、国内の中心的な役割を担うのが日本CCS調査だ。

電力会社、石油関連会社、化学会社、ガス会社などの共同出資により2008年に設立された。CCSは地下1000m以上深くに、CO2を貯めるのに十分な貯留層と、その上にCO2を通さない遮蔽層がある適地で行われる。同社では、08~11年度にかけて、北海道苫小牧市沖で貯留層の事前調査事業を実施。12~15年度には実証試験プラントの設計・建設、圧入井の掘削、CO2圧入後のCO2の挙動と地下の状況を監視するモニタリングシステムの構築など、大規模実証に向けた準備を手掛けてきた。

16~20年度からはCO2の圧入とその後のモニタリングを実施した。圧入CO2は、隣接する出光興産の製油所から石油精製の過程で排出されるガスの供給を受けて分離・回収した高濃度CO2だ。これを実証累計で30万t圧入した。現在は圧入後のモニタリングを継続している。

世界トップレベルの成果 国内に候補地点在の可能性

苫小牧実証の成果としては、①実証目標だった30万tの圧入に成功、②モニタリングや海洋環境調査などで安全かつ安心して利用できると確認、③地震に関連する不安を収集したデータによって払拭、④大都市近傍での社会的受容性の醸成活動に成功―などが挙げられる。

中島俊朗社長は「分離・回収から貯留までのCCSの一貫システムを国内で初めて構築しました。しかも、世界トップレベルとなる低いエネルギー量で実現しています。また、陸上から沖合海底地下貯留層への傾斜井でのCCS、大都市部近接エリアでの貯留など、いずれも世界初の試みに成功しました」と強調する。 日本CCS調査では、苫小牧実証のほかにも、全国で貯留適地調査を行っている。

「遮蔽層がしっかりとした大規模な帯水層を発見できればCCSを実施することが可能です。現在も調査を継続中ですが、日本には多くの貯留適地が存在する可能性があります。調査を加速し、50年カーボンニュートラルに向けて、国内で排出するCO2は、まずは国内で処理することを追求するべきです」と中島社長は話す。日本国内のポテンシャルは高く、今後もCCS推進の取り組みは加速していきそうだ。

北海道・苫小牧の実証プラント