【特集2】スマメが切り開く新ビジネス エネデータ活用に多様な可能性

2021年5月3日

東電管内で概ね設置が終わったスマートメーター。このスマメのビッグデータを始め、エネルギー分野の、あらゆるデータ利活用の行方が注目されている。

スマートメーターから取得できる30分値の電力使用量データをはじめ、エネルギーデータを活用した新サービスが盛り上がりを見せている。

スマメは電力系統の最適制御のため、スマートグリッドを構成する要素の一つとして、2014年から設置が進んでいる。24年度末をめどに全国全ての需要家に取り付けられる計画だ。これに先駆けて、東京電力管内では今年2月末時点で、約2800万台が取り付け済みとなっている。

スマメの電力使用量を計測したデータは30分単位で内蔵する通信機能によって電力会社に送られる。データは図のようにルートによって3種類のデータに分けられる。Aルートはスマメと一般送配電事業者をつなぐもの。検針値を取得したり、接続・切断など遠隔操作のために使われる。

Bルートはスマメと宅内にある家電機器を通信規格「エコーネットライト」で連携可能だ。エネルギー管理システム(EMS)によって、電力使用量や電気料金などの「見える化」、機器の制御のために利用できる。

Cルートは一般送配電事業者がAルートで得たデータを、第三者の企業が需要家にサービスを提供するためのもの。電力小売り事業者などにデータを送信し、料金計算などに使われている。

スマートメーターは通信のやり取り先で三つのルートがある

BルートやCルートのデータは、これまで分からなかった電力使用量が可視化され、需要家に有益な情報を提供する。家電機器の利用時間から推測すれば、節電に活用できる。ただ、データサイエンティストの河本薫滋賀大学教授は「エネルギーの使用量データを単に示しただけでは、継続的に一般的な需要家から関心を得るのは困難」と指摘する。

これに対し、事業者やサービス提供者は、スマメデータのほか、独自に機器を分電盤などに取り付けてデータを取得。さらに加工、成形し直すなど再構築することで、需要家が「魅力的」「有益」と感じるサービスやデータを生み出して提供する動きが加速している。

誰でもデータが一目瞭然 使いやすさで差別化

例えば、一般の需要家にとって簡単かつ分かりやすくデータ表示するスマホのアプリやインターフェースを開発している企業がある。

エナジーゲートウェイでは、スマートホーム向けに「ienowa」を展開する。宅内の分電盤に取り付けた電力センサーを介し、電気の使用量を家電機器別に、スマホアプリ上に表示することが可能。②のように、前月と比較して今月の電気代がどの程度になるかが把握できる。

Natureが販売する「Nature Remo E」ではエコーネットライト規格対応の住宅用太陽光発電や蓄電池、スマメと連携することで、電力の使用量やPVの稼働状況、蓄電池残量がアプリ確認できる。

エナジーゲートウェイの「ienowa」と、Natureの「Nature Remo E Lite」のスマホアプリ画面

またエネルギー以外のビッグデータ、通信や決済機能などスマホの利便性を組み合わせたサービスも登場してきた。ソフトバンクの子会社SBパワーは、各一般送配電事業者から取得したスマメのCルートデータを、独自のAIによる需要予測技術を活用したデマンドレスポンスサービスのトライアルを昨年夏から実施。今年は九州電力と共に取り組む。

スマホ専用アプリを通して、需要家に節電協力を案内し、節電効果に応じてポイントを付与する。ポイントはキャッシュレス決済サービス「PayPay」のPayPayボーナスと交換できる。節電に協力してもらうことで需要家に利益を還元し、モチベーションを高め、しかも需要家が簡単に参加できる仕組みを構築したのは画期的だ。

こうしたエネルギーデータを応用した新サービのス開発・普及の取り組みが、今後も増えていくことが期待される。