【特集2】日本の電力販売に革新をもたらす黒船 多彩なプランと顧客満足度で勝負

2021年5月3日

【TGオクトパスエナジー】

今秋、それぞれの暮らしに合わせてカスタマイズした電力料金プランが登場し、日本に本当の電力自由化がやってくる。

東京ガスは、英国エネルギー事業者のオクトパスエナジーと提携し、今年1月、合弁会社である「TGオクトパスエナジー」を設立した。

オクトパスエナジーはエネルギー業界向けに開発した統合ITプラットフォーム「クラーケン」を用いて、2016年に英国の電力小売り事業に参入。バイラルマーケティングの手法で、わずか5年で約200万件の顧客を獲得した。

強みの一つは300近い料金プランだ。利用状況や使用設備などから顧客に最もメリットのあるプランをAIが診断。SNSやメールで適宜提案し、顧客はスマホやPCからプランの変更ができる。

クラーケンは既にドイツやオーストラリアなどのエネルギー事業者に導入されている。複数のシステムが一本化された統合パッケージであるため、ガスも電気も販売するエネルギー事業者にとって、運用や維持管理の面で大きなコスト削減につながる。

きめ細やかな顧客サービスも特長だ。8人チームで特定の顧客5~7万件を担当する。決まったメンバーが密着したサポートを行うため、コンシェルジュのような対応が可能だ。顧客満足度が高く、離脱抑制につながっている。

アジアで初めてクラーケンを投入するTGオクトパスエナジーは、今秋から電力販売を開始し、順次全国展開していく。実店舗は持たず、SNSなどの口コミで広めることで販管費を抑え、電気料金にも反映できる。

有沢洋平取締役部門長は、「パーソナライズ化したプランを提供し、もっと電力自由化のメリットを享受してもらいたいです。日本のエネルギー事業者ではなし得なかった、新たな顧客体験を浸透させたい。価格勝負ではない、電力小売り第二幕の始まりです」と意気込む。

英国のオクトパスエナジーは、再生可能エネルギーの普及を目指しており、供給する電気を100%再エネで調達するとともに、自らも風力発電事業に参入している。TGオクトパスエナジーも、このマインドを受け継ぐ。

日本版のクラーケンはライセンス販売も視野に入れている。日本の電力小売り事業を大きく変える“クラーケン(=海の怪物)”という黒船がやってきた。

オクトパスエナジー社創業者兼CEOのグレッグ・ジャクソン氏