【特集2】データ活用で見える化から制御へ 再エネの自家消費を最大化

2021年5月3日

【日本ユニシス】

街全体のエネルギーマネジメントを可能にするエナビリティーEMS。ビル建物から戸建て住宅まで、幅広く管理をサポートする。データを活用し、再生可能エネルギー利用の快適な暮らしを目指す。

日本ユニシスのマルチエネルギーマネジメントシステム「Enability(エナビリティー) EMS(E・EMS)」は、建物における電力・ガス・水道など多様なユーティリティーを対象に、利用状況の収集や見える化、機器の遠隔制御によるリソースの管理などを行うシステムだ。

利用状況の収集、見える化では、大規模なビルや工場から一戸建て住宅まで建物全般を計測対象としている。大規模なビルや工場では、エネルギーの見える化のほか、空調機など設備のオン・オフ制御、計測したデータを基にした、子メーターの遠隔検針(料金計算業務と連携した検針値集計)を行う。主に高圧一括受電マンション向けには、エネルギー使用状況を踏まえた「節約ポイントの付与」などのサービスも提供する。一戸建て住宅を対象とした家電製品ごとのエネルギー使用量管理も実施する。

Enability EMSの概要

将来的には、メーター計測値を活用した環境価値管理を目指している。統合的に計測値活用を行い、建物全体のみならず、入居するテナント単位での環境価値管理(RE100への対応など)を支援していく。

収集データで遠隔制御 分散リソースを有効活用する

遠隔制御サービスでは、収集したデータを活用し、発電設備や蓄電・蓄熱設備といった分散リソースを有効活用するためのエネルギーマネジメントサービスの提供を目指している。

低圧電気利用の一戸建て住宅に対しては、日々の電力使用の傾向や気象情報を基に、AIが翌日の需要と太陽光やエネファームの発電量を予測する。自家消費を最大にするため、エコキュートを昼間の時間帯に稼働させる自動制御や、蓄電池の充放電やエネファームの発電量の制御も同時に行う。

高圧電気利用の法人や自治体向けには、一戸建て住宅と同様の制御指示に加え、制御装置にデマンドコントローラーの機能を持たせて、ピークシフト・ピークカットを行う。

リソースで注目度が高いのはEV(電気自動車)のスマート充電だ。普及が進んだ後、充電時にピークが立たないよう、社用車などは翌日の利用予定を基に、充電を制御する。事業者は契約電力の上昇を回避でき、小売り事業者は調達単価の削減につながる。

今年3月から出光興産と共同で、宮崎県国富町の工場と役場にて、太陽光発電システムとEV蓄電池、車両管理システムを活用し、建物の電力需要やEVの稼働状況、卸電力市場動向などの予測値を基にした、充放電制御を最適化する実証試験を開始している。

脱炭素社会実現の鍵 E・EMSで地産地消を支援

日本ユニシスは、5年前から関西電力のコンソーシアムでエネファームやエコキュートの遠隔制御の実証試験を行っている。昨年は九州電力ともエコキュートでの実証を開始している。

実証段階から本番サービスの提供を目指し、上位からの指令による制御と自家消費などのエネルギーマネジメントのほか、レジリエンス(強靭性)向上への対応も検証する。非常用の容量確保や、自然災害などで停電が予測されるときには充電を優先することなども検討。需要家が意識することなく自然エネルギーの活用を推進しながら快適な生活を送れる世界を目指している。

また、自然エネルギーの利用最適化の実現は企業におけるCO2排出量削減へ貢献し、2050年カーボンニュートラルの実現に寄与する。

公共第一事業部ビジネス二部の樋口慶マネージャーは、今後は地域で分散リソースを活用するVPP(仮想発電所)への取り組みが加速していくと予想する。E・EMSで、地域の電力を有効に使うためのエネルギーマネジメントやメーターの見える化によるエネルギー利用の支援だけではなく、地域におけるエネルギーサービスの提供を実現するためEnabilityシリーズを活用したいと意気込む。

「顧客管理や料金計算サービスの『Enability CIS』を組み合わせて、エネルギーマネジメントにおける環境価値の管理や、VPPで需要家の設備を利用する時のインセンティブ計算などをトータルで提供したい。持続可能なサービスとして、エネルギーの地産地消実現と、生活者の豊かで快適な暮らしを支援していきたいと考えています」と、再エネ主力電源化への展望を語る。

非化石証書のトラッキング事務局でもある日本ユニシス。E・EMSを核としたEnabilityシリーズで脱炭素社会の実現を目指す。

リソース(設備)の遠隔制御システムの構想