【特集2】環境配慮型の発電事業 地域連携を果たし活性化

2021年7月3日

【広島ガス】

地域に根付いた事業としてなじみ深かった都市ガス事業。いま再エネ大量導入時代に向けて新たな取り組みが始まっている。広島ガスが、中国電力と共同出資する海田バイオマスパワー(小寺洋一社長)が今春から海田発電所の運転を開始した。出力は11万2000kWで、これまで100kW単位の太陽光発電を手掛けてきた広ガスにとっては、かなり大規模な再エネ発電事業である。

発電所外観。広島ガスと中国電力が50%ずつ出資する

「エネルギー事業において、CO2を削減していくこともさることながら、地元で未利用だった木材資源を発電燃料として有効活用することで、林業活性化や循環型社会の構築に貢献していきたい」

広島ガスから出向している海田バイオマスパワーの藤井速人・総務部総務担当マネージャーは、バイオマス発電事業の意義をそう説明する。

既存設備の有効活用 内航船は環境配慮型

海田発電所は広ガスが2001年まで石炭から都市ガスを製造していた海田工場の跡地(15万6000㎡)の一角に立地する。瀬戸内海に面したエリアだ。原料だった石炭を受け入れるための港湾設備や、工業用水など主要なインフラがあらかじめ整備されていた区画で、新規に発電事業を行うにはまさに適地であった。とりわけ工業用水インフラは、プラントの冷却機能(復水工程)を果たす。海水を利用せずに復水できることから、海域環境への影響を少しでも抑える仕組みだ。

発電所で使う燃料は、木質系のバイオマスを熱量ベースで80%混焼(残りの20%は石炭との混焼)を基本に消費する計画だ。主に3種類のバイオマスを使う。北米から調達するホワイトペレット、広島県内からの木質チップ、そして、東南アジアからのパームヤシ殻燃料だ。合計40万t程度の燃料を消費する計画で、メインとなる燃料は北米からのホワイトペレットだ。そして、県内からの木質チップを5万t程度とし、残りをパームヤシ殻燃料で調整する。

海外からのホワイトペレット、パームヤシ殻は、山口県岩国市内の中継基地を経由する。発電所前の港湾の水深が浅く大型船が直接、入港できないためだ。いったん、中継基地から、新たに造船した内航船「海栄丸」へ積み替えて運び込む。この内航船はセルフアンローダー搭載の船で、密閉に近い状態で荷役することができる船だ。半密閉であることから、周囲へ燃料が飛び散ることがなく、環境に配慮した船である。加えて、中継基地には倉庫を設けて風雨や浸水を避けるなど、バイオマス燃料の品質を維持するための工夫を施している。

バイオマス燃料を運ぶ内航船の海栄丸   提供:商船三井

「県内での木質チップの調達については、地元に迷惑は掛けられません。当社の都合を優先するような調達ではなく、あくまでも地元の方々と良好な関係を築きながら無理のない範囲で、年間5万t程度調達できたらと考えています」(藤井マネージャー)。地元への配慮を踏まえたプラント運用を目指している。

また、発電所の中核を担うプラントのボイラーには、燃料仕様に制約がない循環流動層を採用している。微粉機で粉砕する必要のない5㎝以下のバイオマス燃料をボイラーで燃やしていく。炉内温度は800~900℃となっており、炉内の燃焼に起因した窒素酸化物などを抑制でき、また炉内に尿素や石灰石を直接投入することで、炉内で脱硫脱硝が完結できるような設備となっている。

「基本はベースロード運転です。半年近く試運転を行い、各種バイオマス燃料の混焼率を変えながら、炉内でどのような挙動になるのか確認してきました。広島ガスにとっては初めての大きな発電所です。プラント運用のプロである中国電力さんから出向している方々から、日々学びながら安全・安定的な運用を目指していきたい」(藤井マネージャー) 再エネ主体のベースロード運転は、国策である再エネ主力電源化への大きな一歩。その役割の一翼を海田バイオマスパワーが担う。

山口県内に立地する燃料の中継基地