【特集2】バイオマス業界の変化 重要視される「持続可能性」

2021年7月3日

参入者の多様化、輸入燃料に第三者認証が必須となる中、バイオマス業界は大きく変化している。国内木質バイオマスの振興に向けては、省庁の垣根を越えて取り組みが活発化し始めた。

バイオマス発電のFIT認定件数および導入出力総計(2020年12月末時点:資源エネルギー庁資料より作成)

日照量や風量に左右されず、安定的な再生可能エネルギーとしてバイオマス発電が注目されている。

固定価格買い取り制度(FIT)で収入が保証されていることに加え、①プランテーションで本来捨てられていたパームヤシ殻(PKS)や、木材を粉砕して固形燃料化した木質ペレットのサプライチェーンが発達したことで発電所の大規模化が可能となった、②CSR(社会的責任)、ESG(環境・社会・統治)投資など社会的道義を意識した経営手法が重要視されるようになった―など、ビジネスを取り巻く環境が大きく変化したことを背景に、FITの認定件数(未稼働・稼働含む)は1414件、認定および導入発電出力は1202万2000kW(ともに2020年12月末時点)にまで達した。

急成長を遂げた理由には、FIT制度で多様な業界から事業者が参入してきた点が挙げられる。当初は旧来の電力会社や新電力に加え、都市ガス、LPガス、石油、商社といったエネルギー業界が中心だったが、ここ数年は金融、化学、建設、不動産など異業種の名前も目立ち始めた。

林業と関わりの深い建設業界では、業界トップの清水建設と大林組が発電事業に参入している。清水建設は合弁事業会社を通じて、20年7月に約2000kWの発電所に木質チップの製造工場を併設。地域の森林組合や生産者から間伐材やマツクイムシなどの被害材を購入して運用している。自社の収益増進や地球温暖化対策のみならず、林業の振興や地域創生にも資する事業が増え始めている。

国産バイオマスの可能性 エネ庁と農水省が研究会

政府も国産バイオマス振興に向けた取り組みを活発化させている。

資源エネルギー庁と林野庁は20年7月から「林業・木質バイオマス発電の成長産業化に向けた研究会」(座長=久保山裕史・国立研究開発法人森林研究・整備機構)を開催。森林の持続可能性確保と、木質バイオマス発電事業の自立化を両立する上で何が論点になるかについて、同年10月に報告書を取りまとめた。

現在、バイオマス発電の増大に伴い、林業事業者からは「発電用燃料需要の増加の影響で、木材価格の上昇や供給ひっ迫を招くのでは」との懸念が寄せられている。

対策として、報告書は①これまで捨てられていた森林残材の活用や燃料採取を目的とした早生樹の研究開発、②広葉樹林の活用による供給量の増大、③FIT認定時に既存産業への影響が出ないようチェック強化―などが重要だと指摘した。実際の政策にも反映されており、燃料調達を目的にした早生樹の研究は、経済産業省が21年度予算で12億5000万円を初めて計上。実用化に向けて農林水産省とも連携しながら研究を進める構えだ。

さらに報告書では、FITに頼らない発電所運営として熱を地域に供給する「熱電併給」の重要性も語られている。発電所から近接する製材工場や農園に熱を供給するケースもあるものの、FITで売電するだけで熱は未利用というケースが圧倒的に多い。

この問題を解決するためには、事業者と需要家双方の理解も重要だが、自治体や経産省、農水省、環境省などの関係官庁も協力しながら、熱需要を軸に据えた都市計画を作成する必要もある。

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